第10回:対策本部の立ち上げに備える
準備編その7 対策本部の立ち上げと必要な物資

本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、信州大学特任教授として教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2020/01/08
中小企業の防災 これだけはやっておこう
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、信州大学特任教授として教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
防災活動は、いくつかの班やグループが連携して進めますが、その全体の動きを統括するのが対策本部です。企業によっては、防災対策会議や災害対策班などさまざまな名前で呼ばれていますが、その目的が、会社全体の災害対応におけるまとめ役ということに変わりはありません。今回は、防災活動における対策本部の立ち上げを考えます。
対策本部は、実際に地震が起こり、大きな揺れがおさまった段階で立ち上げますが、その基準を明確にしておくことが大切です。
「震度6弱以上の地震が発生したとき」、あるいは「震度6強以上の地震が発生したとき」のように、発表された震度にもとづいて対策本部を自動的に立ち上げる企業も多いようですが、最終的には実際の被害の有無とその程度に応じて判断することが現実的です。
「対策本部長(社長)が立ち上げを決める」など、立ち上げの基準を属人的にしている場合、当該本部長が地震の発生した地域にいない、あるいはケガをすると、立ち上げが遅れる可能性がありますから、自動的に立ち上げる方式と両建てにすることを検討しましょう。
(1)どの地域に設置するか
対策本部は、発災時にどの拠点が被災するか、またどのくらいの被害を受けるかによって、当初の計画通りに設置できるとは限りません。
例えば、対策本部の場所は原則として本社ビルとなりますが、そのビルの被害が大きい場合は別の場所で立ち上げる必要が出てきますから、代替場所を検討しておくことが求められます。あわせて、自社の建物が津波被害の想定される地域に立地している場合は、それを踏まえて代替場所を検討します。
また、本社ビルがある地域以外の自社拠点が被災した場合は、本社ビルに対策本部を立ち上げるとともに、あわせて現地対策本部の設置も検討します。
(2)ビル内のどこに設置するか
自社ビルが複数階にまたがる場合は、本部をどの階に置くかの検討も必要です。
大地震が発生すると、エレベーターしばらく使用できなくなり、上下階の移動は階段を使わざるを得ない状況が続きます。地上階からの移動距離を短くするため、津波リスクを考慮したうえで、対策本部を比較的低い階に設置することを考えるとよいでしょう。
大企業の場合は、平常時から設置されている防災センターを、災害時には対策本部として機能させることが多く、そこに災害対応に必要な機器類や物資を配備します。しかし中小企業の場合は、平常時から防災センターを設置することは難しいため、総務部や庶務課など対策本部の事務局となる部署のフロアに、必要な物資を置いて対応することが現実的です。
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