2020/01/15
本気で実践する災害食
公助
そこで、屋根の修復ができない特に高齢者、要配慮者などに対する対応策として、次の政策が望まれます。
・公的な復興住宅の建設提供
・空き家の提供:サイズによっては複数世帯がシェアハウスとして使用する
・高齢者ホームの提供:共同住宅
・屋根を修復する工事現場の技術者を国家が養成:日本は災害国なので、職人がいないなどとタワケタことをいつまで言っているのか。一日も早く専門学校をつくり、職人を養成します。工事現場ですぐに役立つ人材の育成を急ぐべきです。教育費は国が負担すればいいでしょう
共助
共助はどうでしょうか。今回のように町ぐるみで大きな被害を受けた場合、お互いに手を差し伸べる余裕がありません。一方、そう長くは生きられない高齢者にとって屋根をふきなおすことは経済的に難題です。どうすればよいでしょうか。
私ごとで恐縮ですが、最近こんな経験をしました。2018年、海辺に住んでいる私は、台風20号に遭い屋根瓦がめくれました。さてどうしようと思案に暮れた末、屋根の修理屋を呼びました。ほんの4、5枚めくれていたのですが、業者は100万円と言っていました。そこに近所の方が通りかかって「この人は貧乏なんですよ。そんな持ち金はない。できれば接着剤でチョコッと直してやってくださいよ!」と口添えしてくれました。業者の若い男性は屋根に上がり、そのように直してくれました。ありがたかった、うれしかった、助かった。お代は要らないと言いました。
これはまさに共助です。日頃、挨拶を心掛けていたおかげです。このようにほんの一言、声掛けしていただくだけで「百人力」が及ぶものです。まさに隣人愛といえましょう。共助とはそうしたものではないでしょうか。
自助
自助には限界があります。特に、人生の終焉(しゅうえん)を迎えた高齢者、病人、ひとり親、要介護者を抱えた世帯、障がい者世帯などの場合、屋根の修理はもはや難題。優しさと知恵のある新しい発想が必要となり、上述のような共助やしっかりした公助が求められます。できれば、災害が発生した後でさまざまな施設を準備するのではなく、日頃から必要な建物をあらかじめ建設して準備しておくことが求められるのではないでしょうか。
そもそも、避難所は学校の体育館などを借りるのが定番ですが、災害はもはや特例ではなく日常化しているのです。しかも少子化で子どもが減る一方で高齢者の被災者の方は増え、避難所が足りないのが現状です。この現実を踏まえて「やすらぎの避難所」と銘打って、公的な避難所を別途建てておくべきです。そうすれば、狭い体育館でぎゅうぎゅう詰めの雑魚寝などというお粗末な避難所の実態は解消されるのではないでしょうか。
南海トラフ巨大地震が起きた場合、私の住む阪神地区では2階近くまで水没する津波が想定されていますが、現状、適当な避難場所が見当たらないので安心できません。
(了)
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