第11回:従業員を守るための仕組み
準備編その8 従業員を守る仕組みの構築
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2020/01/22
中小企業の防災 これだけはやっておこう
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
企業が防災活動に取り組むのは、事業の継続に必要な経営資源を守るためです。経営資源には、建物・設備やライフラインなどさまざまなものがありますが、最も重要なものは自社の従業員であるといっても過言ではありません。被災後に従業員が残っていなければ、その他の経営資源が確保されていたとしても、企業が存続することは困難です。
今回は、地震を例にして、従業員を守る仕組みについて考えます。
就業時間中の社員を地震から守るために最も有効なことは、自社建物の耐震性の確保です。建物が全壊あるいは半壊するなかで、従業員の安全を確保することは極めて困難です。企業には、耐震診断を行い、必要な耐震化工事を進めることが求められます。
さらに、オフィスのキャビネット・書棚の転倒防止、事務機器類の移動防止対策を実施します。また窓ガラスに飛散防止フィルムを貼るなど、ガラスが割れたときに備えた対策も必要です。
企業には、労働安全衛生法のもとで従業員の安全配慮義務が課せられています。地震が発生した際、自社の従業員が無事であるかどうかを確認する「安否確認」を行うことが求められているといえます。
さらに、企業が被災後も事業を継続するためには、安否確認だけではなく、どれくらいの従業員が、発災後どれくらいの時間で自社に駆けつけることができるかを確認する「参集可能人数の確認」が必要です。なぜなら、従業員本人は無事であっても、家族がケガをしているなどの事情で、企業に出勤するまでに時間がかかる、あるいは参集できないことが考えられるからです。
(1)大きな揺れがおさまった直後には、社内にいる同僚の安全を確保する
地震の激しい揺れは、東日本大震災のように数分続く場合もありますが、長くても1分程度というのが一般的です。大きな揺れがおさまり、自らの安全が確保できた段階で、周囲の同僚の安全を確保します。
執務スペースでケガをしている従業員を救出するとともに、会議室、応接室、そしてトイレや倉庫など、従業員がいる可能性のある場所を探して、確認漏れがないようにします。
(2)安否確認システムや社内のイントラネットを活用する
社内にいる同僚の安全確保の次は、外出あるいは休暇などで勤務外の従業員も含めて、安否確認を行います。
従業員の「安否」と「参集可能人数」を把握するために、企業独自で、あるいは外部事業者が提供するサービスを利用して、安否確認を行うところが増えています。
メールや電話を使って確認する方法もありますが、被災時の混乱している状況の下、手作業で確認することは非常に困難ですから、何らかのシステムを導入し、自動的に集計することを検討するとよいでしょう。
ただし首都直下クラスの地震が起こった場合、被災地では交通手段が途絶する、また火災が多数発生するなどの状況から、数日間出勤できない状況になる可能性が高いことを理解しておく必要があります。
中小企業の防災 これだけはやっておこうの他の記事
おすすめ記事
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方