企業が防災活動に取り組むのは、事業の継続に必要な経営資源を守るためです。経営資源には、建物・設備やライフラインなどさまざまなものがありますが、最も重要なものは自社の従業員であるといっても過言ではありません。被災後に従業員が残っていなければ、その他の経営資源が確保されていたとしても、企業が存続することは困難です。

今回は、地震を例にして、従業員を守る仕組みについて考えます。

準備編その8 従業員を守る仕組みの構築

1.自社建物の安全確保

就業時間中の社員を地震から守るために最も有効なことは、自社建物の耐震性の確保です。建物が全壊あるいは半壊するなかで、従業員の安全を確保することは極めて困難です。企業には、耐震診断を行い、必要な耐震化工事を進めることが求められます。

さらに、オフィスのキャビネット・書棚の転倒防止、事務機器類の移動防止対策を実施します。また窓ガラスに飛散防止フィルムを貼るなど、ガラスが割れたときに備えた対策も必要です。

2.従業員の安否確認

企業には、労働安全衛生法のもとで従業員の安全配慮義務が課せられています。地震が発生した際、自社の従業員が無事であるかどうかを確認する「安否確認」を行うことが求められているといえます。

さらに、企業が被災後も事業を継続するためには、安否確認だけではなく、どれくらいの従業員が、発災後どれくらいの時間で自社に駆けつけることができるかを確認する「参集可能人数の確認」が必要です。なぜなら、従業員本人は無事であっても、家族がケガをしているなどの事情で、企業に出勤するまでに時間がかかる、あるいは参集できないことが考えられるからです。

(1)大きな揺れがおさまった直後には、社内にいる同僚の安全を確保する
地震の激しい揺れは、東日本大震災のように数分続く場合もありますが、長くても1分程度というのが一般的です。大きな揺れがおさまり、自らの安全が確保できた段階で、周囲の同僚の安全を確保します。

執務スペースでケガをしている従業員を救出するとともに、会議室、応接室、そしてトイレや倉庫など、従業員がいる可能性のある場所を探して、確認漏れがないようにします。

(2)安否確認システムや社内のイントラネットを活用する
社内にいる同僚の安全確保の次は、外出あるいは休暇などで勤務外の従業員も含めて、安否確認を行います。

従業員の「安否」と「参集可能人数」を把握するために、企業独自で、あるいは外部事業者が提供するサービスを利用して、安否確認を行うところが増えています。

メールや電話を使って確認する方法もありますが、被災時の混乱している状況の下、手作業で確認することは非常に困難ですから、何らかのシステムを導入し、自動的に集計することを検討するとよいでしょう。

ただし首都直下クラスの地震が起こった場合、被災地では交通手段が途絶する、また火災が多数発生するなどの状況から、数日間出勤できない状況になる可能性が高いことを理解しておく必要があります。