2020/04/03
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識
想定の流域雨量を使った判断と流域平均雨量の調べ方
「想定最大規模」と「計画規模」を比べると、多くの場合で「想定最大規模」の方が浸水の範囲が広く、浸水の深さも深くなります。流域平均雨量の実況や予測が「計画規模」の数字に近づくようであれば災害発生を前提として対処し、実況や予測の流域平均雨量が「想定最大規模」のレベルに近づくようであれば、規模の大きな災害に見舞われることを前提に対処すべきであると考えられます。
流域雨量は、気象庁と河川管理者が共同で発表する指定河川洪水予報で確認ができます。
*指定河川洪水予報のページ(気象庁)
https://www.jma.go.jp/jp/flood/
令和元年の台風19号の際にも、荒川を対象に10月12日14時10分に指定河川洪水予報が発表されました(下図)。主文の次にある雨量の欄(赤で囲んだ部分)を見るとこれまでに211ミリ流域で降っており、さらにこの先3時間で70ミリ降ると予測されています。
指定河川洪水予報は目先2-3時間後までの流域平均雨量を把握する際には優れていますが、(1)河川が一定の水位にならないと発表されない(=河川が実際に増水する前のタイミングでは情報がない)、(2)数時間より先にどう流域雨量が増えるのかは次の情報発表を待たなければならない、(3)どの程度の総雨量となるかはそもそも発表されない、という欠点も抱えています。
なお、本記事でご紹介した指定河川洪水予報ですが、2020年度から6時間先までの水位予測が提供される見込みです。詳しくは下記の記事をご覧ください。
https://www.risktaisaku.com/articles/-/27828
このため、自治体のツイッターや首長個人のツイッター、自治体のホームページ、報道や関係機関(気象庁や河川管理者、自治体など)の記者発表なども含めて広くチェックし、トータルでどの程度の流域雨量になりそうなのか情報を積極的に探すのが正解です。台風19号の例では、冒頭の図1で例示したように、NHKの情報が手がかりとなりました。
皆さんもぜひ、浸水想定区域図を見る際には浸水の深さだけを確認するのでなく、どの程度の流域雨量で/何が起こるかをセットで把握してください。そして、河川が増水するような際には流域雨量の見込みを複数のルートから探り、今後直面し得る状況の把握に努めていただければと思います。
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識の他の記事
おすすめ記事
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/19
-
-
-
-
「自分の安全は自分で」企業に寄り添いサポート
海外赴任者・出張者のインシデントに一企業が単独で対応するのは簡単ではありません。昨今、世界中のネットワークを使って一連の対応を援助するアシスタンスサービスのニーズが急上昇しています。ヨーロッパ・アシスタンス・ジャパンの森紀俊社長に、最近のニーズ変化と今後の展開を聞きました。
2025/08/16
-
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方