2013/07/25
誌面情報 vol38
テロ、新型インフルエンザ、サイバー攻撃などを想定
ストリートワイド訓練は、2003年に英国の金融機関がテロ対策として初めて実施し、その後、世界各国に広がっている。想定シナリオは、テロ、新型インフルエンザ、サイバー攻撃など多岐にわたる。欧米におけるストリートワイド訓練の発展の経過と、国内における動向をまとめた。
日本銀行金融機構局が2010年にまとめたレポート「海外における『ストリートワイド訓練』の概要」によると、金融業界でのストリートワイド訓練は、2003年に英国がテロ対策として初めて実施した(英国ではマーケットワイド訓練と呼ぶ)。16の金融機関が参加し、各社の業務担当者が会議室に集まり、テロを想定したシナリオに対して、金融業界全体としての対応を議論した。
英国では、2004年、2005年もテロを想定したストリートワイド訓練を実施。参加企業は32社、70社と毎回倍増し、それに伴い危機管理部門以外の業務部門も参加するようになった。2005年には、シンガポールの金融機関が、テロ対策の業界横断的な訓練として導入し、国際的な広がりを見せ始めていった。
一方、2006年には、英国が、被害想定を「新型インフルエンザの大流行」に変更し、長期間継続する被災環境の中で、時間の経過とともに社会全般にわたる影響が深刻化していく、より複合的な訓練を実施した。新型インフルエンザを想定した訓練は、2007年に米国が、2775金融機関が参加する大規模な訓練として導入。最近では、シンガポール、豪州、フランス、オランダでもストリートワイド訓練を取り入れ、被災想定もサイバーテロや暴風雨など多様化しつつある。

オリンピック期間のサイバー攻撃を想定
近年では、2011年11月には、英国で、金融庁(FSA)の呼びかけのもと、金融機関87社、計3500人が参加する英国最大規模の訓練が行われた。この時のシナリオは、オリンピック期間中におけるサイバー攻撃。2012年7月に開催されたオリンピック期間中に、万が一、金融機関のネットワークシステムがサイバー攻撃を受けた時の対応について、各金融機関のインターネットやテレコミュニケーションへの依存度を検証するとともに、イギリスの決済システム「CHAPS」(日本でいう全銀システム)を支える金融機関が、それぞれの経営陣の意思決定のもと、いかに連携して動けるかを検証した。

この時の訓練は、FSA内に設けられた一室から、訓練の進行役が参加機関に対して、さまざまな状況を付与し、参加機関は与えられた状況に対してどう対応するかを、組織内の経営層、部門責任者、実務担当者が検討して返答する形で行われた。各参加機関からの返答は、次のシナリオへと反映され、より現実味のある想定が導き出された。
例えば、この訓練における最初のシナリオは、「ロンドン市内がオリンピック観光客で混雑する8月3日の早朝、金融機関の立ち並ぶ駅近くで、原因不明の爆発事故が起きる」というもの。各金融機関は、その時点で出社している社員数や、出社せずに自宅からネット回線で業務にあたらせる社員数などを想定し、どう対応するかを回答する。在宅業務があまりに多ければ、回線負荷もそれだけ高くなるため、次のシナリオとして、回線が一時的に使えないなどの状況が言い渡される。こうした訓練により、経営陣の意思決定力が高まるとともに、各金融機関の連携力が検証され、それぞれの金融機関のBCPがより実効性の高いものになる。

誌面情報 vol38の他の記事
おすすめ記事
-
-
エマージング・リスクにどう備える1組織だけでなく、社会としての対応が必要
エマージング・リスク(emerging risks:新興リスク)と呼ばれる、これまであまり認識されていなくて急に出現するようなリスクへの関心が世界的に高まっている。10月にはエマージング・リスクの国際規格「ISO31050」が発行された。今なぜエマージング・リスクへの関心が高まっているのか、組織はどう対応していけばいいのか、日本リスクマネジメント学会(理事長:亀井克之関西大学教授)関東部会の会合で、会員に聞いた。
2023/12/02
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年11月28日配信アーカイブ】
【11月28日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:今こそ学び直す!南海トラフ地震臨時情報 その1
2023/11/28
-
東京都がオールハザード型Step.1を公表
東京都は11月24日、都政BCPを改定した「オールハザード型Step.1」を公表した。これまで主に首都直下地震を想定してきたが、東部低地帯における大規模風水害、島しょ地域での南海トラフ地震による津波被害、火山噴火、中規模な災害など、災害の事象や規模によって対処方法は多岐にわたることなどから、柔軟に対応できるBCPに改定した。これに併せて、被害の実態に即した執行体制を構築することで、災害対応力も一層向上させるという。
2023/11/27
-
南海トラフ地震臨時情報への理解と対応
リスク対策.com はこのほど、気象庁が2019年5月31日から運用を開始している「南海トラフ地震臨時情報」について、企業がどの程度理解し、対応を検討しているかなどを明らかにするため、アンケート調査を実施した。その結果、臨時情報の内容については概ね理解がされているものの、対応について検討したり、具体的な計画を策定している企業は一部にとどまることが明らかになった。
2023/11/26
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年11月21日配信アーカイブ】
【11月21日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:防災・事業継続力を可視化する
2023/11/21
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方