2020/06/18
インタビュー
複合災害の時代 住まいのレジリエンスを再考する
――「j.Pod(ジェイポッド)」などは、ライフスタイルの変化を柔軟に吸収できるのではないでしょうか。

「j.Pod」は一室の耐震シェルターですが、もともとは6帖とか4帖半のモノコック構造体をつくり、それを積み上げたり、連結したりして住居にする発想です。とにかく一人に一部屋があり、台所や風呂は共同というスタイル。「個体群住居」という、昔からある考え方です。

これは私なりの一つの提案で、もちろんそれがすべてではありません。災害対策の観点からは「モノコックでやる」「コンパクトである」「一人ずつ個室が取れる」「自宅で改修できる」といったポイントが大事ですが、RC造や鉄骨造でもいいと思います。
ただ、少なくとも避難生活と仮設生活で人生が疲弊し切ってしまうようではいけない。そのためにも、自宅を簡単に壊すようなことではいけない。いろいろ工夫はできるはずです。
――建築サイドからの工夫の提案ということですか。

例えば住宅を規格化するにしても、地域の地盤特性や気候風土、ライフスタイル、産業構造などを加味して柔軟に行う。それによって日常生活がしやすく、かつ災害に強く、地域経済が盛り上がるよう建築サイドから提案し、議論を起こしていくことが必要でしょう。
これまではずっとスクラップアンドビルドでやってきましたから、回復可能なシステムといっても、すぐには変えられないかもしれません。ビジネスとしては儲からないかもしれない。しかし、だからといってなんでも新しく建て替える、大規模につくり替えるといった考え方は、改めないといけない時代です。
写真・図:特記なきものは住まいと耐震工法研究会

樫原健一氏
かたぎはら・けんいち
一級建築士事務所・技術士事務所SERB代表、有限責任事業組合j.Podエンジニアリング代表、住まいと耐震工法研究会代表。一級建築士、建築構造士、技術士。主な著書に「木造住宅の耐震設計-リカレントな建築をめざして」(共著、技報堂出版)「震災復考-安全な住まいは可能か」(新建新聞社)」など。
https://www.risktaisaku.com/feature/bcp-lreaders
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