火災件数が年々減り、数年後には大量退職者時代を迎え、全国的にほぼ同時期に消防士が若年化する現状のなかで地域消防力を維持するためには、より現場に合った訓練を日々行い、社会事情のスピードに消防行政も追いついていかなければならないと思います。

実はアメリカの消防も同じく、数年後には大量退職者時代を迎えます。2011年9月11日の同時多発テロを受け、343名の殉職者を経験したニューヨーク市消防局の消防学校では、短期間で充足人数を補充するためにほぼ1ヶ月で初任課教養を終え、消防学校で学ぶよりも実際の現場で経験するを優先させます。そのために、まず一番出動回数の多い火災防御活動のさまざまなコンセプトをわかりやすく教えました。

その火災現場対応訓練の教養訓練で多く用いられてきたのが、FBI (Fire Behavior Indicators=火災対応指標)です。

FBI(火災対応指標)の5つの指標

建築構造、煙、空気動線、熱および炎は、消防職員が知っておくべき5つの重要な火災対応指標とされ、アメリカをはじめ世界各国の消防学校や教養訓練でも教えられています。

出典:一般社団法人日本防災教育訓練センター

FBIは下記からダウンロードできます。
http://irescue.jp/PDF/FBI_JAP.pdf

FBIでは、火災防御活動の基礎を理解する上で、サイズアップと動的リスクアセスメントの一環として、まず火災の全容を読み、火災防御活動の初動から鎮火までのプロセスを予想することができます。

特に火災現場活動の少ない署所や新人消防士の多い署所は、このFBIを使って火災防御の基礎を明確に理解しておくことで、現着時に一部始終、指示命令をあおらなくても、隊員達が自ら自動的に安全に、かつ的確な防御活動を行えるようになると思います。

この図を印刷して、トイレや事務所、キッチンなどに張ることで、いつでもこの図を見て、煙や火の色、建物の火災特性などをイメージしたり、確認できるようになるでしょう。

また、このチャートを眺めることで、現場において火災の全容を読むことがスムーズかつ安全になる基礎教育に繋がります。

FBIの表はとてもシンプルですので、特に建築構造、煙、空気動線、熱および炎の各メインキーワードの説明は入らないと思いますが、これ図の各部を説明し、それぞれの現象理由を答えられるようになると一人前だと言われています。

ABCD方面表現について

次にFBI教養時に用いられるパワポ資料ですが、下記の内容は写真を見て、現場を読む練習をするのにとてもわかりやすくシンプルな構成になっています。

下記はFBI教養でよく使われているフローです。
http://www.cfbt-us.com/pdfs/04_cfir_reading_the_fire.pdf

1、建物構造の外面からどのような活動条件を予測しますか?
2、屋内進入をする際、正面玄関からどのような兆候が見えますか?
3、リビングルームを通って、廊下へ移動する際、どのような状態を覚知するでしょうか?
4、寝室ではどのような活動条件を予想しますか?

※火災建物外部からの火災行動の兆候を観察し、リスクアセスメントを実行する際に、あなたが火災建物内部で起こっているすべての状況を映像化し、考えて、お互いに発表して、話し合うことが大切です。活動条件の多様性をできるだけ多く挙げて、どの判断がベストなのか?そうでないのかなどを自由に検討してください。そして、検討した結果の最優先活動予測について。。

5、なぜ、その方法を優先したほうがいいのか?
6、隊によってどのような活動条件の違いが懸念されるのか?


なども話し合ってみて下さい。

図面を用いて、火災防御活動の手順を話し合う場合、建物の方角は東西南北ではなく、現場到着時や屋内進入後は方角がわかりにくくなるので、A(アルファ)、B(ブラボー)、C(チャーリー)、D(デルタ)として、無線交信時に自分の居場所を教えたり、活動場所の移動を伝える際に使います。

ABCD方面表現はとても簡単で、その現場に関わる全ての人たちが、建物の正面をアルファと決めて、右周りに正面から向かって左がブラボー、対面がチャーリー、そして、右手がデルタと呼びます。

出典:West Thurston Fire IMS/ Accountability

 

下記のような火災状況予測訓練や火災原因報告書、火災防御戦略図などにも用いられることがあります。

また、現場指揮所は火災対象物の二方面が観察できる場所で、延焼方向では無く、煙なども影響しない場所に設置します。

出典:Prepared by Thomas Bartsch

いかがでしたか?

現場経験が益々減少する時代に向けて、文章ではなく映像で、理屈ではなく理由で、過去の経験より未来の予測でなど、同じ時間でも合理的に活用し、着実に現場で通用する消防士を育て続ける必要があると思います。

もし消防戦術ワークショップ、殉職者予防ワークショップ、消防職員不祥事予防研修、各種災害対応・消防が行うべき防災対応、海外消防対応事例や、日本にはない訓練の手法などの講師をお探しの方は、どうぞ、一般社団法人 日本防災教育訓練センター、サニー カミヤまで、お気軽にご連絡下さい。全国どこでも喜んで出張いたします。

(了)


一般社団法人 日本防災教育訓練センター
http://irescue.jp
info@irescue.jp