自然災害が発生すれば必ず複合災害になる
第10回:感染症時代のBCP(1)
ミネルヴァベリタス株式会社 顧問/
信州大学 特任教授
本田 茂樹
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
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前回まで、3回にわたりウェブ会議について考えてきました。今回は、すでに策定しているBCP(事業継続計画)について、「ニューノーマル(新たな常態)」の観点から見直すべき点はないか、また見直す点があれば、どのような方向性を持って修正するかを説明します。
1.複合災害への備え
新型コロナウイルス感染症の流行が長期化しています。感染リスクが低減するとともに、早期診断から重症化予防までの治療法が確立されることによって、我々が安全・安心と感じられるまでには、もう少し時間がかかりそうです。
新型コロナウイルス感染症の流行が続くことを前提に考えると、今後、地震や水害などの自然災害が発生すると、それは必ず複合災害となります。
ここでは、まずBCPが機能する仕組みを確認した上で、自社のBCPが複合災害にも対応できるものとなっているか考えます。
(1)BCPは二段構えで考える
BCPというと「災害が発生した後、どのようにして自社の事業を復旧し、それを継続していくかが大切」と考えておられる方も多いと思います。しかし、BCPには「重要な事業を中断させない」という観点と、それでも中断してしまった場合でも「可能な限り短い時間で復旧させ、継続する」という2つの側面があります。
①重要な事業を中断させない
重要な事業を中断させないためには、その事業を行うために必要な経営資源を守ることが必須です。具体的には、従業員、建物・設備、そして電気・ガス・水道などのライフラインを守ることが求められます。
②中断した事業を、可能な限り短い時間で復旧させ、継続する
自社の経営資源を守るためにさまざまな準備をしていても、事業が中断してしまった場合は、欠けたり、足りなくなったりした経営資源を補って、事業を速やかに復旧させ、継続することを目指します。
(2)感染症の流行を意識してBCPを見直す
新型コロナウイルス感染症のリスクはすでに顕在化していますから、当然のことながら、企業はさまざまな感染防止対策を講じています。
一方、感染症の流行が続く中でも地震や水害などの自然災害は起こり得るという観点からBCPの見直しが行われているとは、必ずしも言えません。
自社のBCPにおける、事業を中断させない、そして中断しても可能な限り短い時間で復旧・継続させるためのさまざまな対策が、感染症の流行下でも実効性があるか、機能するか、という点を確認しておくことをお勧めします。