2016/07/07
誌面情報 vol51
水蒸気はガソリン
地球温暖化による気温の上昇のもう1つの大きな問題は、水蒸気の増加がもたらされることです。水蒸気は気温が高ければ高いほど大気中にたくさん含まれます。ですから、気温が上昇するということはそれに含まれる水蒸気の量が増えることを意味します。
私はよく水蒸気はガソリンと同じだという例えをします。水蒸気というものは大きな熱エネルギーを持っているのです。気象学では水蒸気は熱と等価と考えます。ガソリンは燃やすと化学変化によって熱を出しますが、水蒸気は気体から液体への相変化と呼ばれる物理的な変化に伴って熱を出します。すなわち、水蒸気が増えれば増えるほど大きなエネルギーが放出されることになる訳です。
エネルギーが増えると、それだけ激しい運動が起こり、結果として豪雨をもたらしたり、台風を強化させたりします。また、「集中豪雨」という言葉がある通り、雨は集中する性質があります。集中するということは、逆に降らないところ、すなわち干ばつ地帯が発生することがあり、全体として極端現象が増加することになります。
スーパー台風は地球上で発生する最も強い熱帯低気圧
図4は、風水害などによる保険金の支払い上位10位をまとめたものです。これを見ると、4位と10位以外は全て台風が占めています。保険金支払いは災害の1つの指標なのですが、これから、現代の日本でも台風は風水害の大きな原因の1つであることが分かります。
台風にはきちんとした定義があります(図5)。台風は、西部北太平洋、赤道より北で東経180度(日付変更線)より西の領域、または南シナ海の風速17m/s以上の風速を持つ熱帯低気圧と定義されています。
同じように、東部北太平洋と北大西洋で発生するものが「ハリケーン」、南太平洋とインド洋で発生するものを「サイクロン」と呼んでいます(図6)。日本の気象庁は、台風を風速によって「強い」「非常に強い」「猛烈な」というクラス分けをしています。一方で米国は別の表現をしており、こちらも風速で「Tropical Depression」「Tropical Storm」「Typhoon」「Super Typhoon」と定義し、このうちの「Super Typhoon」の日本語訳がスーパー台風になります。
ハリケーンのカテゴリーは1から5までありますが、スーパー台風はおおよそカテゴリー5に相当します。また、過去に記録された最大強度の台風の最低中心気圧は、最大強度のハリケーンよりも低いため、スーパー台風は地球上で発生する最も強い熱帯低気圧であると言えます。
誌面情報 vol51の他の記事
- マスクの基礎知識 フィットテストを怠るな!
- うがいの基礎知識 ガラガラってする?声を出す??
- BCP担当者が最低限おさえておきたいインフルエンザ特措法
- 手洗いの基礎 アルコール洗浄だけでいいと思っていませんか?
- 講演録_01 2015年7月17日開催セミナー 想定を超えたスーパー台風に企業はどう備える?
おすすめ記事
-
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
-
-
-
-
-
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方