2012/11/06
ニュープロダクツ
3Mのオフィス防災グッズ
スリーエム ヘルスケア株式会社、住友スリーエム株式会社
東日本大震災や東京都の帰宅困難者対策条例の制定を踏まえ、大手化学メーカーの3Mでは、独自に研究開発した化学素材などを使ったオフィス防災対策製品を新たに商品化した。BCP(事業継続計画)にも役立つ「災害用寝袋」「高性能防護マスク」「書棚用落下抑制テープ」の3点を紹介する。
■収納性と保温性を両立した 『災害用寝袋』
来年4月から施行される東京都の帰宅困難者対策条例では、事業者に対し、すべての従業員が3日間、施設内にとどまれるよう、水、食料、毛布の備蓄を求めている。これを受け、3Mではオフィス災害用備蓄寝袋「3M ™ シンサレート ™ オフィス災害用コンパクト寝袋」の受注販売を今年 12 月から開始する。折り畳み式で A4ファイルと同等のサイズに収納でき、個人の机の引き出しに入れて備蓄することができる。東日本大震災では停電でエレベー ターが止まるなど、備蓄倉庫まで防災用品を取り出しに向かうのに苦労した企業が多かった。
素材は、スキーウェアやワーキングウェアの中綿として広く利用される3Mの「シンサレート ™ 高機能中綿素材」を採用したことで、薄手ながら高い保温性能を実現した。従来のポリエステル綿の 1.5 倍〜2倍の保温性があり、一般的な災害用毛布より厚手のセーター1枚分相当も暖かく、冬の災害時であってもオフィスで睡眠ができるという(下図表参照) 。
■女性に配慮したデザイン
寝袋の両肩部分はボタンで開閉でき、 椅子に座りながら肩からかけるように着ることが可能。また、頭部に取り付けられたファスナーを調整することで、 顔全体をすっぽり隠し込むように着ることができる。東日本大震災で、避難施設で夜を過ごした女性から「寝顔をみられたくない」という意見が多く寄せられたことに配慮したデザインとし た。
寝袋は水洗いが可能で、使用後も清潔に保管し繰り返し利用することができるため、 「匂いや清潔感から毛布は苦手」という女性でも、気にすることなく使うことができる。オープン価格。
■呼吸がラクな 『高性能防護マスク』
3M が新たに開発した「3M ™ VFlex™ 防護マスク 9105/9105S」 は、NIOSH( 米国労働安全衛生研究所)認定の N95 に適合した防護マスクながら、呼吸への負担が少なく、災害復旧要員でも装着したまま作業ができる。N 95 とは、粒子状物質を吸わないために使用される防護マスクの規格。
空力学的質量径でおおよそ 0.3 マイクロメーターの粒子(タバコの煙と同じくらいの大きさ)を 95%以上補集できる高性能マスクだ。日本では、新型インフルエンザ対策として N95 のマスクを備蓄した組織は多い。当然、新型インフルエンザ対策だけではなく、地震、津波、火山爆発などの自然災害により発生するホコリやアスベストなどの様々な有害物質を防ぐマスクとしても有効に機能する。
しかし、 従来製品は、 一般の花粉症対策で利用されるようなプリーツ状のマスクに比べて密閉性が高い一方で、性能を担保するために呼吸しずらくなることが課題だった。
新開発の 「3M™ VFlex™ 防護マスク」は、特殊な加工や構造を工夫することで、3Mがこれまで提供してきたN95マスクと比較して、装着時の呼吸が格段としやすくなった。従来製品と比較すると、30%以上呼吸がラクになっている。
同社では、より快適な装着を追求し、顔の大きさに合わせてレギュラーサイズ (9105) とスモールサイズ(9105S)の2タイプを用意。価格はオープンだが、3M オンラインストアでは 1 箱 50 枚入りで 4900 円(税別)で販売。これは 1枚当たり 98 円となり、従来の N95 のマスクと比べて割安となっている。

■貼り付けが簡単 『書棚用落下抑制テープ』
「3M ™ 落下抑制テープ」は、特殊加工したウレタンを表面に持つテープで、 本棚に貼るだけで地震時の書籍類の落下リスクを低減させる。多くの企業や自治体では、本棚そのものの転倒防止はすでにされているものの、書籍の落下防止は、地震対策の盲点だった。同 製品は、開架式書棚からの本やバインダーなどの落下物によるケガのリスクを低減し、また避難通路の確保や書類の散乱防止をすることで速やかな業務の再開を助ける。
テープは、特殊工具など必要なく、誰でも簡単に貼ることができる。棚の手前部分に貼るだけなので、本やファイルの出し入れなど面倒な作業が不要だ。テープの厚さは 0.3 ミリと薄く、 貼り付け後も本やファイルの出し入れに支障をきたさない。透明で棚の美観も損ねることがない。
価格は9メートル用が 4200 円(税別)、1.8 メートル用が 976円 (税別)。 1棚の長さ 90センチをとすれば、9メートル用で 10 棚分、1.8 メートル 用で2棚分が施工できる。1棚あたり約 400 円という計算だ。業務用の類似製品は、本の下に敷くシートタイプが 1 棚につき 1000 円〜 2000 円、ベルトタイプの製品が 1 棚 1000円以上で、コストパフォーマンスにも優れている。
同製品は 2011年7月から図書館向け製品として先行販売し、すでに全国の公共図書館や大学図書館で広く採用されている。
独立行政法人防災科学技術研究所がまとめた病院向けの防災対策ガイドブックや日本図書館協会施設委員会のテキストなどでは書棚からの落下防止の必要性について指摘があり、本製品はこれらに適合する。
※ 3M、シンサレート、VFlexは、3M社の商標です。
【お問い合わせ先】
■3M™ シンサレート™ オフィス災害用コンパクト寝袋
■3M™ VFlex™ 防護マスク 9105 / 9105S
スリーエムヘルスケア株式会社 安全衛生製品事業部
TEL 0570-011-321
受付時間/8:45〜17:15(土・日・祝日・年末年始は除く)
■3M™落下抑制テープ
住友スリーエム株式会社 文具・オフィス事業部
TEL 0120-510-333
受付時間/9:00〜17:00 …(土・日・祝日・年末年始は除く)
ニュープロダクツの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方