多くの企業に共通するBCPの問題点
第1回:まだ地震用のBCPしかつくっていないんです

荻原 信一
長野県松本市出身。大学卒業後、1991年から大手IT企業に勤務。システム開発チームリーダーとして活動し、2005年にコンサルタント部門に異動。製造業、アパレル、卸業、給食、エンジニアリング、不動産、官公庁などのコンサルティングを手がける。2020年に独立。BCAO認定事業継続主任管理士、ITコーディネータ。
2023/08/27
ざんねんなBCPあるある―原因と対処
荻原 信一
長野県松本市出身。大学卒業後、1991年から大手IT企業に勤務。システム開発チームリーダーとして活動し、2005年にコンサルタント部門に異動。製造業、アパレル、卸業、給食、エンジニアリング、不動産、官公庁などのコンサルティングを手がける。2020年に独立。BCAO認定事業継続主任管理士、ITコーディネータ。
はじめまして。トラストワンコンサルタンツの荻原信一と申します。今回から「ざんねんなBCPあるある」と題して、企業のBCPを取り巻く問題点とその解決策について論考していきます。どうぞよろしくお願いします。
さて、BCPの検討では、業務に必要なリソースが制約を受けた場合にどのような対応ができるのか、シビアな状況まで想定して考えることで情報が整理でき、事業継続戦略が立てやすくなります。また、計画の実効性を確保するうえでは、訓練とその検証を繰り返すことで課題を抽出でき、新たな気付きを得ることができます。
そして抽出した課題や新たに得た気付きからBCPを見直したり、必要な事前対策を追加したりするためには、事業継続マネジメントに経営者が積極的に関与することが必要です。と、あたり前のセオリーを述べましたが、現実には必ずしもそのとおりになっていないというのが筆者の実感です。
筆者はコンサルタントとして、多くの企業のさまざまなフェーズのBC活動に携わってきました。既存のBCPを拝見したり、現地を見たり、担当者と会話したりした内容を振り返ると「あれっ?」と思うような点が多々思い浮かびます。そしてそれは、その企業だけの問題ではなく、思ったより多くの企業が同じ問題を抱えていることもわかってきました。いわゆる「あるある」です。
本連載では、そんな「あるある」がBC活動のどの部分に潜んでいるのか、実際の事例を紹介しながら、その「あるある」が発生する原因を考察し、対処の仕方を論じていきます。誤解を恐れず個人的な見解でどしどし書き進めていきますが、実体験にもとづいておりますので、BC活動を行ううえで何らかの参考になるのではないかと思っています。
この道の諸先輩方、諸先生方におかれましては、行き過ぎた表現などがあったとしても、何卒お目こぼしいただきますようお願い申し上げます。
なお、筆者は東京を中心に活動しているため、紹介する事例の多くは東京に本社を構える企業になってしまいます。あらかじめご承知おきください。では、今後この連載をどのように展開していくか、大筋の構成を目次としてお示しします。
おおむね以上の構成で進めていきます。では、早速ですが、第1章の「リソース制約と事業継続戦略の検討・見直しの『あるある』」に入っていきましょう。
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