AIやITシステムを企業が有効に使うために重要なこととは(イメージ:写真AC)

AIの利活用におけるトップダウンの弊害

これまで、AIの特徴や功罪面にスポットをあて、ITも含めて便利な道具として適切に使い効果を上げるべきであることを主張してきた。同時に、IT 環境の変化にともない、環境変化に適合して自分自身も変化していく必要性を訴えてきた。それらを踏まえ、実社会でのAI活用にどのように向き合うべきか、どのような注意が必要なのかを論じていきたい。

いま、多くの企業で「AI」あるいは「対話型AI」の実用を促すトップダウンの指示がなされている。新聞紙上でも、多くの企業に同様のアンケートが実施されている。さて、そのトップダウンを受けて、現実にはどのような動きになっているだろうか。

「まず利用ありき」で、どう利用するかがあと回しに(イメージ:写真AC)

トップダウンを受けた組織は、最初に勉強から始めるのではないだろうか。その場合、指示と同時に、コンサルタントが作成した利活用の事例が配られ、ときには勉強会などで説明を受ける。そしてその事例を自部門の業務に当てはめ、適当な業務を選定し、効果想定した数字を添えて提案して実行に移す。これがAI利活用の実績となる。

コンサルの立場でもある筆者がいうのもなんだが、このコンサルによる誘導が本質的な利活用を妨げ、指示待ちの受け身姿勢を生み出し、イノベーションを阻害するのではないかと感じざるを得ない。結局、必要性に応じた導入ではなく、使うこと自体が目的化してしまっているのだ。

つまり、AIを使用している進んだ企業であるというプロパガンダを重視し、各組織に導入を競わせている。実際、東京都庁の発表では、全部局へ導入し5万人規模の利用者とのことだ。が、この構造で生み出された実績は虚構でしかない。ユーザーの必要に寄り添っていないからだ。

システム開発を成功に導く秘訣の一つとして古くからいわれているのが、ユーザー参加である。それは、ユーザーが実際に困っていることを解決し、実施したいことを実行する手法として、システムという道具を利用すべきだからだ。そこでユーザー側の要件定義が肝になるのは当然である。

確かに変化と冒険を嫌う日本社会の気質で新しい道具を実用化するには、トップダウンによる強力なリーダーシップは必要不可欠だ。が、だからといってユーザー側の需要を無視して有効な実用化につながるはずはない。