企業のAI導入が失敗するシンプルな理由
第47回:IT後進国から脱却できるのか(7)

多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2023/09/13
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
これまで、AIの特徴や功罪面にスポットをあて、ITも含めて便利な道具として適切に使い効果を上げるべきであることを主張してきた。同時に、IT 環境の変化にともない、環境変化に適合して自分自身も変化していく必要性を訴えてきた。それらを踏まえ、実社会でのAI活用にどのように向き合うべきか、どのような注意が必要なのかを論じていきたい。
いま、多くの企業で「AI」あるいは「対話型AI」の実用を促すトップダウンの指示がなされている。新聞紙上でも、多くの企業に同様のアンケートが実施されている。さて、そのトップダウンを受けて、現実にはどのような動きになっているだろうか。
トップダウンを受けた組織は、最初に勉強から始めるのではないだろうか。その場合、指示と同時に、コンサルタントが作成した利活用の事例が配られ、ときには勉強会などで説明を受ける。そしてその事例を自部門の業務に当てはめ、適当な業務を選定し、効果想定した数字を添えて提案して実行に移す。これがAI利活用の実績となる。
コンサルの立場でもある筆者がいうのもなんだが、このコンサルによる誘導が本質的な利活用を妨げ、指示待ちの受け身姿勢を生み出し、イノベーションを阻害するのではないかと感じざるを得ない。結局、必要性に応じた導入ではなく、使うこと自体が目的化してしまっているのだ。
つまり、AIを使用している進んだ企業であるというプロパガンダを重視し、各組織に導入を競わせている。実際、東京都庁の発表では、全部局へ導入し5万人規模の利用者とのことだ。が、この構造で生み出された実績は虚構でしかない。ユーザーの必要に寄り添っていないからだ。
システム開発を成功に導く秘訣の一つとして古くからいわれているのが、ユーザー参加である。それは、ユーザーが実際に困っていることを解決し、実施したいことを実行する手法として、システムという道具を利用すべきだからだ。そこでユーザー側の要件定義が肝になるのは当然である。
確かに変化と冒険を嫌う日本社会の気質で新しい道具を実用化するには、トップダウンによる強力なリーダーシップは必要不可欠だ。が、だからといってユーザー側の需要を無視して有効な実用化につながるはずはない。
再考・日本の危機管理-いま何が課題かの他の記事
おすすめ記事
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/10/14
走行データの活用で社用車をより安全に効率よく
スマートドライブは、自動車のセンサーやカメラのデータを収集・分析するオープンなプラットフォームを提供。移動の効率と安全の向上に資するサービスとして導入実績を伸ばしています。目指すのは移動の「負」がなくなる社会。代表取締役の北川烈氏に、事業概要と今後の展開を聞きました。
2025/10/14
トヨタ流「災害対応の要諦」いつ、どこに、どのくらいの量を届ける―原単位の考え方が災害時に求められる
被災地での初動支援や現場での調整、そして事業継続――。トヨタ自動車シニアフェローの朝倉正司氏は、1995年の阪神・淡路大震災から、2007年の新潟県中越沖地震、2011年のタイ洪水、2016年熊本地震、2024年能登半島地震など、国内外の数々の災害現場において、その復旧活動を牽引してきた。常に心掛けてきたのはどのようなことか、課題になったことは何か、来る大規模な災害にどう備えればいいのか、朝倉氏に聞いた。
2025/10/13
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/10/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方