2013/05/01
防災・危機管理ニュース
訓練手法から使えるツールまで分かりやすく紹介

内閣府(防災担当)はこのほど、『企業の事業継続マネジメントにおける連携訓練の手引き』(PDF版)を発刊した。連携訓練の具体的な手法をわかりやすく解説するとともに、参考資料として、シナリオの作成や被害想定の設定、検討課題の抽出など、訓練に役立つ資料へのリンクが紹介されている。
内閣府では、企業等のBCM を支援するため、これまでも「事業継続ガイドライン」を公開するなど企業向けの情報を提供してきたが、東日本大震災やタイにおける大洪水のような広域かつ甚大な災害が発生した結果、自社だけでなく、多くの取引先企業を含むサプライチェーン全体の事業継続性の確保が極めて重要であることが改めて明らかになったことから、より多くの企業が事業継続に係る連携訓練に取り組めるよう、今回「連携訓練の手引き」を作成した。
内容は、第1章「連携訓練入門」、第2章「連携訓練の企画・実施」、第3章「連携訓練の実施モデルケース」の3章と、参考資料で構成。
第1章では、連携の主体として企業内の部門、グループ企業、取引先企業などが含まれると定義。広義では地域なども対象になるとした。その上で、訓練を実施する上での注意点として、経営者のリーダーシップ、シンプルでいざという時に活用できる内容にすること、いきなり完璧な訓練を行うのではなく、機能、条件を考慮して場面ごとに行うことなどを挙げた。
訓練の方法としては、机上訓練、シミュレーション訓練、実働訓練の3種類があるとして、テーマや習熟度、目標達成レベルに応じて最適な手法は異なるとした。シミュレーション訓練では、訓練シナリオを参加者に開示した状態で訓練を行う「オープンシナリオ」型と、参加者に対して問題を提示する「ワークショップ」型、訓練シナリオを参加者に開示しない「ロールプレイング」型などを例示。各訓練の準備として、必要なツールも例示した。

第2章では、テーマの設定、訓練の企画、訓練の実施、振り返りという順で、企画から実施方法までを解説。連携訓練では、その対象範囲の設定が難しいことから、点(個社の部門連係・グループ企業連携)、線(取引先企業)、面(地域連携、業界連携)、層(官公庁、指定公共機関)に分けて考えることを提案。その上で訓練の目的を、①通信訓練、②被害状況の共有訓練、③サプライチェーン継続訓練、④マネーチェーン継続訓練のように明確に設定し、マトリクス上に示すことで企画が立てやすくなるとした。

また、具体的な訓練のイメージが描けるように、上記①から④について、「訓練の設定」「実施方式の設定」「対象場面の設定」「参加者の選定・役割分担」「事前準備」「シナリオイメージ」「成功のポイント」「振り返りの進め方」をそれぞれ表形式で示した。

第3章では、実施モデルケースとして、食品を中心に全国展開している卸売業者A社と、A社の物流を担当している関連会社B社、A社からの食品などの商品供給を受けている小売業者C社の3社の連携訓練を取り上げ、2章に基づく実例を紹介した。
同モデルは、日本生活協同組合連合会が今年2月9日に実施したもので、本誌リスク対策.comでも2013年3月25日号で特集している。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方