株主総会の概要
株主総会の意義、機能等について

山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2024/06/19
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
今年も定時株主総会の季節がやってきました。日本において、定時株主総会の開催の多くが6月末に集中するとされています。
この点、定時株主総会の開催日については、会社法(以下、法名省略)296条1項で、「毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」とされているのみです。
一方、124条1項では、株式会社は、株主としての権利行使ができる基準日を定めることができるとされており、同条2項では、基準日を定める場合には、基準日株主が行使することができる権利の内容を定めなければならないとされているところ、当該権利は「基準日から3箇月以内に行使するものに限る」(同項かっこ書)とされています。
そして、日本では事業年度末日(決算期)が毎年3月末日とされている株式会社が多い関係で、毎年6月末に定時株主総会の開催が集中するという事象を招いているのです。
株式会社において、定時株主総会の開催は、事業年度における最大のイベントであるといっても過言ではありません。後述するように、株主総会は、会社の最高の意思決定機関であり、株主との建設的な対話の場でもあるからです。
また、株主総会の決議に瑕疵がある場合には、それが決議取消事由となり得ます。そして、株主総会決議が裁判で取り消されることになると、多方面に大きな影響を及ぼしかねない事態となってしまいます。
そこで、今回、株主総会の概要についてご説明したいと思います。
株主は、株式の保有を通じて、株式会社を実質的に所有しています。一方、株式会社の経営については取締役が担っており、株式会社は、所有と経営が制度上分離した組織形態です。
株主総会は、議決権を有する全ての株主によって構成される機関であるところ、株式会社の実質的な所有者である株主の議決権行使により当該株式会社の意思決定がなされるものであり、株主総会は、株式会社の最高の意思決定機関であるとされています。この現れとして「株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる」(295条1項)とされています。
一方、取締役会設置会社においては、「株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる」(295条2項)とされており、株主総会での決議事項が取締役会非設置会社に比して狭められています。これは、裏を返せば、取締役会(=経営側)で決定できる事項の範囲が広いということであり、この点を捉えて、取締役会設置会社は、所有と経営の制度上の分離がさらに進められたものであるともいわれています。
弁護士による法制度解説の他の記事
おすすめ記事
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方