株主総会の概要
株主総会の意義、機能等について

山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2024/06/19
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
今年も定時株主総会の季節がやってきました。日本において、定時株主総会の開催の多くが6月末に集中するとされています。
この点、定時株主総会の開催日については、会社法(以下、法名省略)296条1項で、「毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」とされているのみです。
一方、124条1項では、株式会社は、株主としての権利行使ができる基準日を定めることができるとされており、同条2項では、基準日を定める場合には、基準日株主が行使することができる権利の内容を定めなければならないとされているところ、当該権利は「基準日から3箇月以内に行使するものに限る」(同項かっこ書)とされています。
そして、日本では事業年度末日(決算期)が毎年3月末日とされている株式会社が多い関係で、毎年6月末に定時株主総会の開催が集中するという事象を招いているのです。
株式会社において、定時株主総会の開催は、事業年度における最大のイベントであるといっても過言ではありません。後述するように、株主総会は、会社の最高の意思決定機関であり、株主との建設的な対話の場でもあるからです。
また、株主総会の決議に瑕疵がある場合には、それが決議取消事由となり得ます。そして、株主総会決議が裁判で取り消されることになると、多方面に大きな影響を及ぼしかねない事態となってしまいます。
そこで、今回、株主総会の概要についてご説明したいと思います。
株主は、株式の保有を通じて、株式会社を実質的に所有しています。一方、株式会社の経営については取締役が担っており、株式会社は、所有と経営が制度上分離した組織形態です。
株主総会は、議決権を有する全ての株主によって構成される機関であるところ、株式会社の実質的な所有者である株主の議決権行使により当該株式会社の意思決定がなされるものであり、株主総会は、株式会社の最高の意思決定機関であるとされています。この現れとして「株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる」(295条1項)とされています。
一方、取締役会設置会社においては、「株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる」(295条2項)とされており、株主総会での決議事項が取締役会非設置会社に比して狭められています。これは、裏を返せば、取締役会(=経営側)で決定できる事項の範囲が広いということであり、この点を捉えて、取締役会設置会社は、所有と経営の制度上の分離がさらに進められたものであるともいわれています。
弁護士による法制度解説の他の記事
おすすめ記事
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方