大災害、なぜ逃げないのか
国や自治体の避難勧告・指示・誘導に問題はないのか
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
2018/09/03
安心、それが最大の敵だ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
「やはり、そうか」。朝日新聞(2018年8月27日付)の記事を読んで、失望の念を深くした。記事の大見出しは言う。「大雨の特別警報で避難指示、実際に避難 住民の3%弱」。30%ではない。わずかに3%!である。水害が迫っていても、「あえて避難しない」のか、それとも「とても避難できない」のか。
いずれにせよ、災害時における避難誘導の問題が一向に解決していない(避難の実績があがっていない)現状を示している。中でも、お年寄りや身体障碍者など社会的弱者への避難の連絡や誘導の遅れは極めて深刻である。
日本列島の国土は地球の陸地のわずか0.25%だが、世界で起きる地震のうち約2割が日本で起き、活火山は7%が集中している。台風や大雪にしばしば見舞われており、内閣府のまとめでは、2001年までの30年間の被害額は世界の16%を占めた。その後被害額のパーセンテージは高くなっているとも聞く。
風水害や地震などの自然災害に弱い場所に、住宅、道路、工場が立ち並び、社会が抱えるリスクは拡大する一方だ。活断層、津波が襲来する海岸、軟弱な地盤、崩れやすい斜面、火山噴火の予想される市町村、未整備のままの河川…。災害をなくすことは出来ない。「減災」に向け、まずは身の周りのリスクについて知り、迫りくる危機に備える必要がある。自治体が災害対策を急ぐ背景には、東日本大震災以降相次ぐ自然災害により日本が抱える「災害リスク」から目を離すことが出来なくなったことがある。だが、その対策は十分に成果を挙げているであろうか。
◇
朝日の記事は続ける。「特別警報」。台風や大雨で数十年に1度の災害が起きる恐れが大きいとして、気象庁は2013~17年の間に「特別警報」を計7回は発表した。対象となった12道府県の307市町村に朝日新聞がアンケート調査したところ、自治体が避難指示を出した地域の住民のうち、実際に避難所に逃げた割合は3%弱だった。これを受け、早期に適切な避難を促すため、避難勧告・指示やマニュアルを見直した自治体は36%に上ることが分かった。
昨年(2017年)までの特別警報発表自治体(307市町村)を対象に、気象情報に伴う避難情報や避難の実態、マニュアルの改定などについて質問し、295市町村(96%)から回答を得た。
本年7月の西日本豪雨では11府県の186市町村に特別警報が出されたが、被災自治体は復旧作業が膨大なため、集計が十分にまとまっておらず、マニュアルも見直しの最中とみられることから、対象に加えなかった、という。
今回のアンケートを集計すると、避難指示が出された地域の住民、計約177万3000人のうち、実際に避難所に逃げた割合は2.6%だった。住民が避難を見送ったり、避難のタイミングを逸したケースが多いとみられる(高齢者が多いと考えられる)。
こうした現状を踏まえて、避難情報の発令に関するマニュアルを見直したか尋ねたところ、36%にあたる105市町村が「見直した」と答えた。主な変更点は、▽夜間に強い降雨が予想される場合は発令を早める▽小学校区などより小さな地域ごとに判断する▽防災無線やエリアメール等を使い、情報が住民に確実に伝わるようにするーなどだった。
また気象庁の情報発信や自治体との連携に関し、国への要望を尋ねたところ(1)特別警報の発表を検討する際は自治体に早めに連絡して欲しい(2)特別警報発表時に国が危機感を強く示し、住民に避難の必要性を訴えて欲しいーとの意見・要望もあった。
アンケートでは、住民が避難しない理由についても質問した。複数回答で(1)「自分は大丈夫だとする危機感の欠如」77%(2)「避難情報の意味を十分に理解していない」64%(3)「ハザードマップを認知していない」34%ーの順で多かった。ハザードマップは自治体が期待するほど住民には理解されてはいない、のではないか?
<避難情報に関する基準やマニュアルの主な見直し(例)>
・避難情報を発信する明確な基準を定めたタイムラインを作成(茨城県結城市)
・強い降雨が夜間から明け方にかけて予想された場合、早い時間に発令(栃木県益子町)
・避難情報の発令基準がなかった河川について、新たな基準を設定(津市)
・雨量予測、市民からの情報などを含めて、早い段階で判断出来るように改める(滋賀県栗東市)
・特別警報の発表時には避難判断の基準を一段階引き上げる(京都府大山崎町)
・気象庁が発表する洪水警報の危険度分布を発令基準に追加(福岡県嘉布市)
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