内部公益通報対応体制
組織の長や幹部に関する内部通報への備えと心得

山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2024/09/19
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
公益通報者保護法は、平成16年(2004年)に制定され、同18年(2006年)に施行されました。そして、令和2年(2020年)に改正され、令和4年(2022年)6月1日から施行されているのが、現行の公益通報者保護法(以下「現行法」)です。
現行法の目玉のひとつが、事業者がとるべき措置などが定められている11条です。11条1項は、事業者に対し、公益通報の受付、当該公益通報に係る通報対象事実の調査及びその是正に必要な措置をとる業務(公益通報対応業務)に従事する者(従事者)を定めるよう義務づけています。
その上で、同条2項では、「公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない」として、事業者に対し、内部公益通報対応体制の整備を義務づけています。なお、これらの義務に関し、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については、努力義務であるとされています(同条3項)。
現行法の施行から2年以上が経過していますので、内部公益通報対応体制の整備を義務づけられた事業者では、同体制の運用実績が蓄積しつつあると思いますが、ご所属の組織において、内部公益通報対応体制は、適切に機能しているでしょうか。
行政機関の例になってしまいますが、地方自治体のひとつでは、知事に関する告発がなされたものの、その告発が本人や側近幹部に知られた上、知事らから告発者に対し、不適切な対応がなされたのではないかということが大問題となり、連日、大々的に報道されています。
こういった例に照らしても、とりわけ、組織の長や幹部に関する内部通報があった場合の対応につき、組織のヒエラルキー上、それらの者の下部に位置づけられているであろう従事者としては悩ましい立場に置かれ、その悩ましさが、内部公益通報対応体制の機能不全として表面化してしまうことがあるのではないかと思われるところです。
そこで、今回は、組織の長や幹部に関する内部通報について、備えと心得をお伝えしたいと思います。なお、現行法につき、ガバナンス構築・コンプライアンス確保の手段としての内部公益通報制度という観点からの記事(改正公益通報者保護法の着眼点【前編】【後編】)がありますので、よろしければ、そちらもあわせてお読みください。
弁護士による法制度解説の他の記事
おすすめ記事
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方