関東大震災後の鉄道網整備、政治介入と破綻
悲運の鉄道技師・太田圓三、先見的な計画と挫折
![高崎 哲郎](/mwimgs/8/a/-/img_8afe85f0a99992cf482358bf355c39a359288.jpg)
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
2019/02/25
安心、それが最大の敵だ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
鉄道が経済と文化の大動脈であることは古今を問わず定理となっている、と言える。近現代は、より大量に、より早く、ヒト・モノ・カネ・情報が行きかう時代である。明治期半ば以降、近代化を急ぐ日本は鉄道こそ富国強兵の「カギ」であり、新しい公共事業(投資)の要だとの方針を掲げた。
大正期に入って、帝都東京市(当時)やスプロール化する周辺部の交通網は、増大する輸送需要に対応しきれず、しかもその改善の方途がいっこうに確立していなかった。そこに大正12年(1923)9月1日正午前、首都圏を中心に関東大震災が襲った。首都圏は壊滅状態となり犠牲者と被災民であふれた。生き地獄となった関東大震災と復興計画の<光と影>については既に詳述したが、今回は鉄道技師・太田圓三(えんぞう、1881~1926)の輸送網再興計画を中心に先進的な復興への情熱とその挫折を考える(以下、「日本の鉄道―技術と人間―(原田勝正・著)」を参考にし、適宜引用する)。
大震災の直後の9月27日に官制が公布されて設置された帝都復興院(総裁後藤新平)は、未曽有の自然災害を機に、東京や横浜の根本的な都市改造の好機ととらえ実現しようとした。
だが、この遠大な計画は、周知のように利権を追う保守系の政党政治家や政界に発言権を持つ有力地主層らの暗躍によって徹底的に矮小化され、帝都復興院自体も翌・大正13年(1924)2月23日に廃止されて内務省の外局とされた。極端な格下げであった。
東京市内の交通について見ても、市街地の区画整理が被害が甚大だった「下町」に限定された結果、東京市や周辺区域全体の総合的な改造はまったく不可能な状態とされた。
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方