災害食大賞のロゴ(提供:防災安全協会)

日本人だけが災害に遭うわけではない

日本人だけが災害に遭うわけではありません。災害はあらゆる人々に一様に襲い掛かります。災害時に、外国人がうろたえ苦しむことは避けたい、災害食を食べる外国人にも適切で丁寧な災害食の提供が望まれています。東日本大震災、熊本地震でもそうでしたが、災害時に外国人を視野に入れた対策は十分とはいえない状況で、その対策が強く求められています。これまでの「内向き志向」に終止符を打ち、新しい転換を図ろうとしているのです。早く転換しなければ、次の災害に間に合わないという緊迫した意図が読み取れます。

この災害食コンテストの案内書は日本語と英語で書かれています。応募者は国外からでもOKです。災害は世界中で起こっています。2018年9月から今日までマグニチュード7以上の地震の発生状況を見てみましょう。ペルー、インドネシア、フィリピン、カムチャッカ半島、南大西洋、アラスカ南部、地中海、ニューギニア、インドネシア、ニュージランド、南太平洋など多数です。国外に災害食を提供できれば世界中に安心、安全を届けることが可能です。国際的に見て優れた技術を駆使した日本の災害食(宇宙食などの非常食も含む)を海外へ発信し、危機管理に貢献したいと考えているのです。斬新な企画といえましょう。もちろん台湾、韓国、中国、インドなどが視野に入っています。 そんな訳で、災害食の名称、原材料表示、賞味期限、保存方法、成分表示、作り方、食べ方、注意事項、内容量など全て英語表記が求められています。日本語だけ書いて自分たちだけ分かったらOKというセコイ考えから脱皮しなければ、このコンテストには応募できません。ハードルも高く設けています。ロゴマークは「beyond2020」です。

 

金・銀・銅、そしてグランプリ

さて、部門ごとに「金」「銀」「銅」、それに「グランプリ」の賞があります。賞といえば、どんな印象をお持ちですか? 私は単純によく利用しているのが、赤ワインを買うときです。店頭に立ち多くのワインに囲まれると、どれがいいのかなかなか決めかねます。そこで、つい店員さんに「最近、金賞をもらったのはどれですか」と尋ねます。「じゃあ、それをください」。どっちみち味の良し悪しが分からないのですから、金賞だ!というのが私の決定打です。そう思って飲むと何となくおいしい気がして上機嫌です。これは、私の自嘲に過ぎませんが……。

災害食は一般の消費者の目に触れにくく、「それ、何?」という反応がまだまだ多いと思います。もっと知らせることが必要です。ネット販売ですと、ネットを見ない人には分かりません。いい物がどこかで作られていても、情報がないと残念ながら買えません。こうしたコンテストは、消費者に対してはよい物を掘り出し情報を拡散する意味と、生産者に対しては良い物を作る意欲を喚起するという両面で意義があります。

災害食大賞表彰式(防災安全協会)

災害食は、多くの場合、ライフラインが止まり、水、ガス、電気が使えない避難所または避難生活で飲み食いされます。非常事態です。多くの災害食は温めたり、冷やしたりできないので室温で口に入ります。この特殊性をいかに考えているかどうかが、普段の飲食物と大きく違うところです。おいしいことが第一条件ですが、それだけでは十分とはいえません。被災者の生活環境に寄り添う配慮が必要です。災害弱者(高齢者、病人、幼児、乳児、アレルギー体質の人など)に対して受け入れやすい配慮が必要です。

そういう意味で、災害食は難しい食品づくりです。日々の努力を褒め、たたえ、より一層良い製品の開発が望まれています。もし、食品や飲料を製造されているなら、ぜひ受賞を目指してみてはいかがでしょうか。

これは6月5~7日の3日間、東京ビックサイトで開催される「2019防災産業展 in 東京」で展示され、6日には特設会場で表彰式が行われる予定です。

(了)