2019/04/25
しば副編集長のmi vista

共助考えるきっかけに
「防災教育の日」は単なる学校での防災訓練を行うだけではない。1校時(時間目)に「『命』の授業」と題した、防災に関する授業を実施。災害時にとるべき行動などを学ぶ。2校時は「保護者・地域への啓発講話」として、有識者や専門家を招いて保護者向けの講話を行う。招くのは防災の専門家や大災害の被災者やNPOの関係者のほか、東京消防庁の消防署員の場合もあり、地域の防災力向上に資する話を行うという。3校時は通常授業だが、この間に授業のない教職員や市から派遣された職員が、保護者や地域住民と連携して避難所開設や運営訓練を行う。

そして学校によって一部開始時間は異なるものの、シミュレーションの発災予想時刻である午前11時24分に防災無線が一斉に流れ、避難や避難所開設、保護者への児童・生徒引き渡しといったシミュレーションに基づいた訓練を行い、検証を行う。これまでは各校により内容は異なっていたが、2018年度から統一メニューとしてすべきことを一つ設定。2018年度はマンホールトイレ組み立て訓練を行った。市職員が主導し、児童・生徒や保護者、地域住民に説明を行いながら組み立てていったという。そのほか、炊き出しなど各行独自の取組が行われた。

この訓練には自治会のほか、「地区協議会」と呼ばれる、地域防災の充実をはじめ、様々な課題解決に取り組む地域のネットワーク組織なども参加する。避難所の開設・運営訓練や午後の各校独自メニューの実施に大きく貢献する。「地区協議会」は、概ね小学校の校区を単位に、自治会や消防団、PTA等をはじめ、学校長もメンバーとなり活動する。「調布市防災教育の日」への参加以外にも定期的な会合のほか、秋などに防災に関するイベントも行っている。発災時には日頃の訓練やつながりを生かして「自助・共助」の役割が期待される。1999年から組織化し、現在は全20小学校区中16の地区に設置されている。
学校は子どもを預かる場であるだけでなく、避難所として地域住民の安全の砦(とりで)としての役割も担う。そこにフォーカスし、マニュアルを作るのみでなく、実際そこにいる児童・生徒と教職員に加え保護者や地域住民も巻き込んだ仕組み作りや訓練を行う調布市の取り組みは、基礎自治体における共助を考えるきっかけを作り、盛り上げるものとしてとして注目される。
(了)
しば副編集長のmi vistaの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方