予防策:2回の予防接種で99パーセント免疫がつく

麻疹の予防で唯一有効なのは予防接種です。2回の予防接種により、99パーセントの人が免疫を持つことができます。

日本では1966年に麻疹ワクチン接種が開始されましたが、当初は、不活化ワクチンと生ワクチンの併用でした。副作用の軽減を目指し1969年からは高度弱毒ワクチンに切り替えられ、さらに1978年からは1回の接種が定期予防接種として組み入れられました。1989年に一時、麻疹・おたふく風邪・風疹の3種類のワクチンを混合したMMRワクチンが導入されましたが、おたふく風邪ワクチンによる無菌性髄膜炎が多発したことを受け1993年に中止となりました。その後再び麻疹単独のワクチン接種が行われていましたが、2006年以降は麻疹・風疹混合のワクチンの2回接種が開始されました。1回もワクチン接種を受けていない人や、受けても免疫が十分でない人を対象に追加措置が行われています。

もし麻疹患者と接触し、緊急に発症を予防したい場合は接触後72時間以内に予防接種をすることで発症を防ぐことができる可能性がありますが、100パーセントではないとされています。また接触してから5~6日以内であれば、γグロブリンの注射で発症を抑えることが可能ではありますが、これは医療者とよく相談する必要があります。

まん延への対策として、一番は2回の麻疹予防接種を確実に行うことではありますが、感染者があった場合は、その人からの感染拡大を抑える必要があります。それには麻疹という診断を確実に行う必要があります。最近は麻疹患者の減少とともに実際の患者を診察した経験のある医師が減少しており、正確な麻疹の診断をするために、臨床診断に加えて、病原体の確認や抗体の上昇による検査を行うことが必要とされています。確実な診断がつけば、他の人との接触を避けるなどの防御ができるわけです。

対策・治療:まずは電話で受診方法を確認

症状が出現し、麻疹を疑った場合は、診断を受けるために医療機関を受診するわけですが、その際に症状とともに麻疹の可能性があることを受診先に電話などでまず伝え、受診方法を聞くのがよいと思われます。麻疹患者が受診されると、院内にいる麻疹の抗体がない人では感染を起こす可能性が高いことになり、そこから感染が拡大するおそれがあります。そのため、診察までの待機場所などをあらかじめ確認しておく必要があります。

麻疹に対する特異的な治療はないといわれていますが、非常に重篤になる場合があり、確実に診断されることは重要です。治療は主に対処療法になりますが、入院しての治療が必要になることもあります。麻疹は5類感染症になりますので、医師は診断したり、可能性が高いと判断したときは速やかに保健所に届け出をし、その後保健所職員が本人に接触し、感染の可能性について問診を行ったりあるいは正確な診断のための検査を行います(受診した医療機関から提出された検体の検査を含め)。

終わりに:正確な情報を

麻疹は感染力の高い、生命をおびやかす可能性がある疾患です。昔のように、1度かかれば2度とかからないので、1回はかかっておいた方がよいなどの考えは、全く通用しません。世界中から麻疹を撲滅するために、正確な情報を入手し確認しながら感染を防ぐ注意が必要です。

(了)