住民主体の策定を目指す

地域防災計画は、市町村の防災会議が策定することが災害対策基本法で定められている。

しかし、今回の地域防災計画の改定にあたっては、市は防災会議メンバーに加え、学識経験者や石狩市の代表者となる商工会議所関係者、農業・漁業組合関係者など、地区の代表者ら19人で構成される「石狩市地域防災計画改訂委員会(以下、改訂委員会)」を設置した(図1)。改訂委員会に石狩市防災会議から作業を委託するという形をとったのだ。同時に、市民レベルで地区の町内会関係者や学校・幼稚園、医療機関、企業、消防団員らから選出された「地区防災計画策定会議(以下、策定会議)」を設定。策定会議は加賀屋氏の提案で、地域の特性を考慮し8つの地区に分け、それぞれ年に4回のワークショップを開催することになった。

写真を拡大  図1 石狩市防災計画、改定等策定スキーム(石狩市提供資料を元に編集部作成)

策定会議は道内のコンサルティング会社である株式会社ドーコンのスタッフがファシリテーターを務め、基本的に住民が主体的に会議を進めてもらう形式をとった。当事者意識を持ってもらうため、市の職員はすべての会議に同席はするものの、必要な情報提供や資料提供のほか、他のワークショップの活動状況を報告するなどコーディネーターの役割に徹したという。また、改訂委員会と策定会議は、基本的に一緒に作業することはない。策定会議は地区防災計画を作ることに専念してもらうためだ。改訂委員会は策定会議の中で共有された問題意識をどのように地域防災計画の中に取り込むかを考える場として機能させたという。

「8つの地区が同時並行的に考え、それを市側で地域防災計画に盛り込みながら改定作業を進めていったので、それぞれが別々に地区防災計画を上げてくるような場合に比べれば、比較的作業はスムーズだったのではないか」(笠井氏)。

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(図2)8つの地区に分けられた石狩市

8つの地区にはそれぞれ想定災害の違いがある。例えば市の北部の浜益地区、厚田地区は石狩市に新しく編入した地域。山岳地帯だが一部海岸線沿いに平地がある。海に流れ込む川沿いに集落が点在し、海岸線にも集落があるため津波の被害を受けやすい上、背後に山も控えているために土砂災害の危険性もある地域だ。南の海沿いに位置する新港地区は工業団地。3000ヘクタールのなかに製造業、食品業、建設業など約600社がひしめいている。ここでは水害のほか帰宅困難者が出る可能性もある。新港地区の東隣にある本町地区は旧石狩町役場があった地区で、最近は高齢化が進んでいる(図2)。ワークショップは、こうした地区の災害特性に合わせて議論が進められていったという。