■「水の中の消防士たち」


出典:Youtube

こんにちは。サニー カミヤです。このコラムでは、船舶火災、海や河川、池等に落水危険のある火災現場活動中、もし、フル装備の状態で落水した場合、どうするのか?また、落水した仲間をどうやって助けるのか?自ら助かるには?などを具体的にご紹介いたします。

そもそも、みなさんは、フル装備で泳げると思いますか?

海に面した建物が多いニューヨーク市消防局では、火災建物からの水中転落や緊急避難脱出を想定して、下記のビデオのような消防士の着衣泳法実験を行っています。

■ニューヨーク市消防局による消防士のフル装備着衣水泳実験ビデオ

出典:YouTube

フル装備着衣水泳の実験結果からわかったことは。。

空気呼吸器が無い状態:
・防火衣自体は浮力が無いため、防火衣を着た状態で泳ぐのは、水の抵抗が大きく、非常に困難。
・防火衣の袖口はゴムで絞られているため、服内に空気が溜まりやすく、浮きやすい。
・落水後、5〜7分間は、防火衣内の空気によって、楽な状態で水面に浮いていられるが、約7分を過ぎると防火衣は徐々に水を吸って重たくなり、水の重みが増して浮力が減るため、できるだけ、最初の5分以内に防火衣を脱いで陸を目指すこと。
・ブーツは一番空気の滞留量が多いため、落水後は、一旦、仰向けで両足を挙げた状態(浮いて待て状態)で心を落ち着かせ、仲間へのOKサイン後、陸に上がる手段をとる
・泳ぎ方は、前に進む平泳ぎよりも後ろ向きに泳いだ方が進みやすい。

空気呼吸器を装着した状態:
■ニューポートニュースMIRT

出典:YouTube

・落水するときには面体を両手で抑え、顎を引くこと。頭を上げた状態で落水すると空気ボンベで後頭部を強打する可能性が高い。落水危険のある現場では、空気呼吸器の各ベルトとヘルメットのあごひもをしっかりと締めておくこと。
・空気呼吸器着装時は肩ベルトや胴ベルトにより防火衣内に空気の層を作るため浮きやすくなり、空気ボンベも浮力があるため、落水後すぐに脱着しないこと。
・落水したことを他の隊員に知らせるためにアラームを鳴らすかライトで合図する。
・ほとんどの空気呼吸器は水中でも面体さえしっかりと密着していれば呼吸ができる。実験結果では水深5mで問題なく呼吸ができている。
・特に冬場の冷たい水に落水した場合、ショックとパニックで呼吸困難になることが多いため、面体を片手で押さえながら、ゆっくりと空気を吸い、吐くときにはプププププと小さな泡を出すようにしてエアの消費を抑える。
・落水時、面体がPD供給弁等セカンドステージ結合部から外れた場合は、PD供給弁を口にくわえて、直接呼吸ができる。もし、エアーが足りない場合は、プレッシャーデマンドバルブを徐々に解放して呼吸する。
・空気呼吸器のエアーがなくなり、脱着したい場合は、面体を最後に外すよう着装とは逆の方向に脱着する。
・面体に水が入ったときのマスククリアはプレッシャーデマンドバルブを解放することで面体内を陽圧にして水を出し、呼吸を続ける。