2016/08/16
ワールド ファイアーファイターズ:世界の消防新事情
①帰署後の後片付け時の活動記憶の整理と次の現場への気持ちの入れ替え
②シャワーを浴びることでのリフレッシュ
③出動報告書記載時の具体的活動内容記録による明確な体験把握
④キッチントークでの感情交換、相互ストレス緩和、メンタルリセット
⑤就寝前の読書や軽い運動などでの心身調律
⑥寝る前にはネガティブなことや反省などを思い浮かべず、たとえ、要救助者が死に至ったとしても、十分にやるべきことはやったという達成感にウェイトを置くこと。
⑦自分が心身共に健康であれば、これからも多くの人たちを助け続けることができるという自信と責任を持つこと。
また、悲惨な現場を対応した勤務明けに、お互いに過度な精神的苦痛を緩和するために朝から酔っ払うまで酒を飲んだり、パチンコなどのギャンブルを長時間行ったり、自己流でPTSIのさまざまな症状から逃げようとしますが、場合によっては消防士を自殺にまで追い込むことがあります。
2、EMSC(エモーショナル・メンタル・ストレスコントロール)とは

たとえば、自分の子どもと同じ年齢の子どもが、顔の形がなくなるほどの悲惨な交通事故に遭った現場で、救出するまでにその子を左腕に抱いている数分間、自分の子どもと「同一視」してしまい、大量の血液や頭皮臭、母親の助けを求めて泣き叫ぶ声など、現場の全てが映像として記憶されてしまうことがあります。
私も福岡市消防局でレスキュー隊だった時代に出動した数百件の現場シーンが、30年経った今でも映像として記憶が残っており、帰省時、それぞれの現場の前をタクシーなどで通過する際に悲惨な情景が蘇えり、そのたびに亡くなった方々へ手を合わせています。
特に自分の左腕の中で息を引き取った方々の最後の言葉や血まみれでも安らかな顔、 握りしめられた手のぬくもりや息を引き取るときの焦点が合わなくなる目など、約30年前の体験ですが、今でも、野次馬の声やサイレンの音など、周りの音までもハッキリと思い出せるほど深く脳に記録されています。
自己判断ですが、災害現場の記憶が原因となる PTSIのような心身の症状は出ておらず、鬱病なども無いと思われますので、問題は無いと感じていますが、当時、現場対応した隊員個々の感受性も異なるため、中にはトラウマティックになったケースもあるのかもしれません。
アメリカの各消防局でも過去25年間、消防士の鬱病や自殺などにより消防力を低下させないために災害後のデブリーフィングや退職者をピアという相談役カウンセラーにするなど、「メンタルマネージメント」について、挑戦してきました。
しかし、なかなか消防士自らが手を挙げてカウンセリングを受けることはなく、今でも組織的なプログラム下のトレーニングによってメンタルを鍛えるのは難しい課題となっています。
次のビデオは具体的なEMSC(エモーショナル・メンタル・ストレスコントロール)が紹介されています。
■Firefighter Survival "Beyond The Call"
出典:YouTube/ London Professional Fire Fighters Association
■Illinois Fire Fighter Peer Support
出典:YouTube/ Illinois Fire Fighter Peer Support
ワールド ファイアーファイターズ:世界の消防新事情の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/05/05
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方