Q.確かに、従業員対策については、全体的に課題だったことがアンケート結果からも分かっています。そればかりか、BCPに積極的に取り組んでいる企業も、BCPにそれほど取り組んでいない企業でも、従業員対策については、それぞれ多くの課題を感じていたことが明らかになりました。言い方を変えれば、一連の台風へ対応では、BCPの入り口である従業員対策にすべての企業が躓いたとも言えるかもしれません。

おそらく、地震と違って、徐々に被害が大きくなる進行災害というものに慣れていなかったのではないかと思います。どの時点で従業員に注意喚起をすればいいのか、出社・帰宅の判断基準を示せばいいのか迷われた企業も多かったのではないでしょうか。地震は最初に大きなインパクトが来ますから、安否確認のタイミングで迷うようなことはあまりないのですが、台風や豪雨のような進行災害は、被害状況の確認であったり、従業員への指示のタイミングが難しいということは大きな特徴として認識すべきです。企業は、タイムラインのような計画を作り、やるべきことを整理しておくべきだと思います。

 

Q.2018年の大阪府北部地震の際にも、同じアンケートを実施していますが、BCPが機能しない理由については、非常に似た課題が出てきました。

そうですね。BCPが機能しなかった理由については、「社員の意識が低かった」「BCPで風水害は想定していなかった」「被害状況の確認が遅れた」といった項目が高かったわけですが、「風水害は想定していなかった」「被害状況の確認が遅れた」というのは、先ほど説明したように進行災害への対応の課題を表していると思います。


なぜ、大阪府北部地震と同じような結果になったかと言えば、大阪府北部地震は、突発的な地震ではありましたが、出社時間中に起きて、多くの防災担当者が交通機関の中に閉じ込められ、結果的に、風水害などの進行災害と同じように、すぐに災害対応に当たれない状況が生まれたわけです。会社にそのまま行くかどうかの判断が迫られ、会社に行っても全員がそろっているわけではなく、対応にあたれる人数もまばらだった。したがって、「被害状況の確認が遅れた」という項目が高くなりました。