病原性はまだはっきりわからない

Q6 「かかりやすく重い」というのが、一番怖いわけですか?

そうですが、そうした分類を、ウイルスからだけでは証明できないのです。患者さんの軽重含めて経過や背景を知ること(疫学調査)が必要です。現時点ではそうした人がどれくらいいるか明らかになっていない。今後の調査のポイントになるところでしょう。

かかりやすい・かかりにくいというのは、人の行動も影響します。感染者や感染源の近くにいれば、当然かかりやすい。一方、症状の重い・軽いはその人の健康状態によっても大きく左右されます。

そもそも肺炎というのは病原体が何であろうと、その多くは命に関わる病気。そしてことに悪化しやすいのは、高齢者と何らかの病気(基礎疾患)を持っている人です。そうした人は、新型コロナウイルスに関わらず、肺炎には注意をしないといけません。

Q8 政府の対策についてどうお考えですか?

中国で新型ウイルス肺炎拡大 在留邦人が武漢から帰国(写真:AP/アフロ)

WHO(世界保健機関)は現在、流行地域から人を引き上げなさいという勧めはしていません。しかし武漢では、中国による移動制限などが行われ人の動きが止まる一方、一般生活が困難となり、不安も増大しています。そのなかにいる日本国民については当然、一時帰国させる判断はあり得ることです。

このとき周りが気をつけないといけないのは、感情的な対応です。不安な地域から帰ってきた人を、本来はねぎらいあたたかく迎えるべきところですが、感染症というのは差別的感情を生みやすい。たとえば、帰国者の子どもが「学校に来るな」といわれる、家族が洋服をクリーニングに出したら拒否されるといった心ない行為が、過去実際に起こっています。

感染症の拡大防止だけを考えるならば、関係のない人までまとめて網をかけ、隔離してしまうのが最も有効です。中国がとった対策がそうですね。ただし、そうするとうつらないのにうつると思われたり、健康だけれど危ないといわれたりといった、感情的な差別が起きやすくもなります。

日本の感染症法は、こうした事態を招かないことも鑑みて、罹患した人やそのおそれのある人を早くみつけて場合によっては隔離するという枠組みになっています。関係のない人までまとめて網をかけるような対策は、相当重症なものでないととれないことになります。

新型コロナウイルスによる肺炎は、感染症法にもとづく「指定感染症」(※)になります。ただし一類ではなく二類。かつ、自治体が市民に行動自粛を促す新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象にはならないと付け加えられています。感情的に心配や不安をあおるのではなく、科学的な裏付けをもって判断することが必要だと思います。

※感染症法の一類~三類感染症に分類されていない新たな感染症を指定するもの。期限は1年間。ウイルスが変異して感染力や毒性が高まった場合を想定し、必要に応じて患者を指定の医療機関に入院させて隔離したり、就業を制限したりといった措置をとれる。新型コロナウイルスによる肺炎は2月1日に指定感染症の二類に分類された。過去の指定感染症は次のとおり。
​2003年 重症急性呼吸器症候群(SARS)
2006年 H5N1型鳥インフルエンザ
2013年 H7N9型鳥インフルエンザ
2014年 中東呼吸器症候群(MERS)