新聞配達員が安全に配達できる仕組みとは(写真:写真AC)

■安全な配達のための基準はあるか?

前回、新聞社からは直接読者に向けたメッセージを、折込広告会社からは広告主に向けたメッセージを発信することを提案した。いずれのメッセージも「激しい台風や豪雨の際は、新聞販売店では配達よりも従業員の安全確保を最優先する」ことを読者や広告主に理解してもらうのが狙いだ。

またこの2つは、新聞社や折込広告社が、悪天候時の配達の是非を新聞販売店の判断に一任する、いわば了解事項でもある。

新聞販売店では、これに沿って配達員の安全を考えた上で配達の是非を判断することになる。では、最終的な意思決定者である新聞販売店では、配達員が安全に配達できるような仕組みを独自につくることは可能だろうか。

運送業などが台風接近に備えて対処しようとすれば、運行管理者がテレビやインターネットの気象情報をチェックしながら、随時ドライバーに安全なルートや待機場所などを指示できるだろう。あるいは予算と人材に余力のある企業は、民間の気象サービス会社と契約して、きめ細かな台風情報を入手するだろう。

どちらにしても、リアルタイムの気象情報の監視と安全なオペレーションを指揮命令する専任者とは表裏一体でなければ成り立たない。

しかし残念ながら、ただでさえ人手の足りない新聞販売店では、上記のような専任者を確保するのが難しい。しかしいくつか工夫すれば、より能動的に台風接近の危機を察知し、それを新聞配達員の安全な配達に活かすことは不可能ではないはずだ。

■新聞販売店のBCP的安全配達基準

ここでは、安全な新聞配達の是非を決めるための方法として次の2ステップを提案する。

【ステップ1】ハザードマップによる配達区域の災害発生リスクの把握

まずは洪水や氾濫、土砂災害に関するハザードマップを入手する。これは国土交通省のハザードマップポータルサイトや自治体のホームページからダウンロードできるし、市町村によっては印刷物として市民に配布しているところもある。

新聞販売店はこれらのハザードマップを手元に用意し、自分たちの配達区域の災害発生リスクの有無をチェックする必要がある。

ハザードマップは信用できるのかって? ハザードマップはほぼ正確につくられている。これを無視したために避難が遅れて危ない目に遭った市民も少なくないはずだ。

そもそも自分の販売店及び新聞配達区域が浸水や冠水、土砂災害の危険があるのかないのか、いざという時に避難すべきかその必要はないのかをまったく知らずに事業を営むこと自体、あまりに無防備すぎやしないだろうか?

【ステップ2】警戒レベルを知らせるアラートに着目

分かりやすい避難勧告の基準として2019年6月から「警戒レベル」の運用が始まっている。筆者は2019年10月の台風19号が東京上空を通過した際に「警戒レベル」の使い勝手を自ら検証してみたが、おおむね満足のいくものであった。

警戒レベルを最も確実に目と耳で察知できるのは、防災行政無線の呼びかけと、これとほぼ同時に携帯やスマホに着信する災害アラートメールである。

ハザードマップと災害アラートに注目(写真:写真AC)

警戒レベルは1~5の5段階まであるが、市町村が発令するのは警戒レベル3(高齢者等避難開始・避難準備)、レベル4(避難勧告・指示)、レベル5(災害発生・命を守る最善の行動)の3段階である。また原発事故の避難のように全市民を対象としているわけではなく、浸水や冠水、土砂災害の危険のある地域の住民が対象である(その意味でも事前のハザードマップの確認は必須)。

言うまでもないことだが、警戒レベルといえども、適切なタイミングで適切な警戒レベルを発信できるか否かは各自治体の“危機管理能力”にかかっている。100%絶対確実なアラートはないことを覚えておこう。

新聞社、購読者、広告主の3者が「台風や豪雨の際は配達員の安全確保が最優先される」ことを了解している限り、新聞販売店は心置きなく上記のステップ1と2の情報をもとに、配達の是非を判断することができる。

例えば警戒レベル3までは天候に注意しながら配達してよし、しかし警戒レベル4が出されたら(たとえ新聞やチラシが販売店に入荷していても)配達は中止するといった基準をつくるのである。この時、ステップ1で述べたように、ハザードマップで販売店の安全性または危険性が前もって確認できていれば、慌てたり戸惑ったりすることなく落ち着いて行動できるに違いない。

■新聞社間による配達員の安全確保のための協定

最後に、再び「新聞社」側の対応を紹介しよう。沖縄タイムス社と琉球新報社が、暴風警報発令中は両社の指示で新聞配達を行わせず、警報解除後も配達が危険・困難な地区は見合わせる――などの覚書を軸とする「台風・災害時における新聞配達に関する協定」を締結したという記事である。

沖縄と言えば台風の通り道に位置する。新聞社も個々の新聞販売店も、台風の脅威に対してはある程度免疫ができていると思うのだが、その沖縄の新聞がこうした念入りな協定を結ぶ。まさに凶暴化しつつある台風災害に対し、ワンランク上の対処が必要だとの危機感の現れなのだろう。以下はその全文である。

沖縄タイムス社と琉球新報社、暴風警報発令中は新聞配達見合わせ
(2019年11月2日付 ヤフーニュース配信)

沖縄タイムス社(武富和彦社長)と琉球新報社(玻名城泰山社長)は1日、暴風警報発令中は両社の指示で新聞配達を行わせず、警報解除後も配達が危険・困難な地区は見合わせる-などの覚書を軸とする「台風・災害時における新聞配達に関する協定」を締結した。
配達員の生命の尊重と安全確保を第一とし、両社と両販売店は相互に連携して協力。協定には両社で協議の上、配達可能と判断した場合には臨機応変に対応することも盛り込んだ。安全対策や危険回避のためのガイドラインを作成。両社の販売店間で配達対応を情報交換する。同日、那覇市内であった締結式には両社販売店の代表も立ち会い、協定書と覚書に調印した。
沖縄タイムス社の具志堅毅読者局長は「新聞社は沖縄の課題を発信する意義がある。使命を全うすべく配達員の環境整備も取り組んでいきたい」と話した。琉球新報社の潮平芳和取締役読者事業局長は「安全が確保できてこそ、配達の使命が達成される。信頼関係を基に、協調・協力していきたい」と語った。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191102-00492529-okinawat-oki
(記事更新の都合上、削除される可能性もあるのでご承知おきください)

(了)