2020/04/30
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識
まれな雨量の調べ方
今回の記事では、まれな雨量を調べる手がかりとして大雨特別警報の発表基準を用います。大雨特別警報の発表基準はこの先見直しが予定されていますが、現時点では50年に一度のレベルの雨量が発表基準の一部として使われています。その一環で、全国の市町村別に50年に一度に相当する雨量がまとめられている資料が気象庁のページ上で公開されているので、それを用います。
▼気象庁作成の「雨に関する各市町村の50年に一度の値一覧」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/tokubetsu-keiho/sanko/1-50ame.pdf
上記の資料を開くと次のような表が確認できます。北海道から沖縄まで順に並んでいるので、PDFの検索機能などを利用して関係する市町村を探してみましょう。下は東京都の「千代田区」を探して、該当部分を抜き出した図です。

データが並んでいる部分の一番上が千代田区です。「50年に一度の値」として、R48、R03、SWIというものが並んでいます。R48は48時間の降水量(ミリ)、R03は3時間の降水量(ミリ)です。SWIは土壌雨量指数というもので、今回は取り上げません。
東京都千代田区を例にすると、3時間に168ミリや、48時間に409ミリというのが50年に一度の規模のまれな雨量となります。3時間の値は、短い時間ながら発達した雨雲がかかり続け大雨となるようなタイプの際に、48時間雨量は台風や前線の停滞などで雨が長引き大雨になるタイプの際に赤い旗として使うのが適しています。
ちなみに、今回例として挙げた千代田区の値と皆さんの場所の値は全く異なることがあるので、「50年に一度の雨は3時間で168ミリ、48時間で409ミリ」と覚えるのは不適切です。
例えば、雨の多い三重県尾鷲市を例にすると、3時間の方は248ミリ、48時間の方は987ミリです。雨が少ない瀬戸内地方の場合、香川県高松市では3時間に126ミリ、48時間に360ミリという数字になります。このように地域差があるので、あくまでその場所にとってまれな雨量とはどのレベルかを調べた上で覚えてください。
今まで降った3時間雨量や48時間雨量の調べ方
3時間や48時間雨量で示された50年に一度のまれな雨量に近づくか、あるいは超えるかを判断する際には、雨量の予測情報とともに、これまでに何ミリの雨になっているかという情報も欠かせません。
3時間分の値はまだしも、48時間分を手で足し合わせるのは煩雑です。気象庁のホームページには「これまでの○時間で降った雨」を簡単に調べられるツールがあるので、それを利用しましょう。そのツールは以前も別の記事でご紹介した「降水の状況」というものです。以下の期間、それぞれの雨量についてアメダスで観測された降水量が確認できます。
▼「降水の状況」
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/mdrr/pre_rct/index24_rct.html
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