荒川区内の木造住宅密集地域(提供:高崎氏)

首都東京の最悪の弱点、木密地域

政府の中央防災会議が2005年に公表した東京直下地震の被災規模は、震源を東京湾北部、マグニチュード7.3、冬の午後6時に地震発生と想定して次のようであった。建物の罹災は85万棟、死者は1万1000人(死因は主に建物倒壊で約3100人、火災で約6200人)、負傷者は21万人、がれきの発生量は9600万tであった。

経済被害額は112兆円という国家予算をはるかに上回る巨額な数字(日本政府の1年間の租税収入の2倍を超える)となり、直接被害は67兆円、間接被害は45兆円であった。まさに<生き地獄>である。津波は想定外・計算外となっている。

東京が大地震に襲われた際の最悪の弱点が木造住宅密集地域(木密地域)であることは論をまたない。阪神・淡路大震災による犠牲者の大多数が木密地域の建物倒壊で命を落としている。異常気象や自然災害が相次ぐ中、行政はもとより市民レベルでも「防災まちづくり」が求められている。しかしながら、大都会の住宅密集市街地には依然として老朽化した木造住宅が軒を連ね、路地は狭く曲がりくねっている。スラム街を連想させる地区も残っている。

国土交通省は2003年「地震等において大規模火災の可能性があり重点的に改善すべき密集市街地(重点密集市街地)」(全国で約8000ha)を公表した。次いで2012年には「地震時等に著しく危険な密集市街地」(全国で6000ha)を発表している。このうち圧倒的多数を占めるのが東京都で、113地区、1683haに上っている。

具体的には、文京区(1地区、13ha)、台東区(3地区、29ha)、墨田区(19地区、389ha)、品川区(23地区、257ha)、目黒区(3地区、47ha)、大田区(4地区、61ha)、世田谷区(6地区、104ha)、渋谷区(3地区、45ha)、中野区(9地区、152ha)、豊島区(5地区、84ha)、北区(21地区、270ha)、荒川区(8地区、126ha)、足立区(8地区、107ha)。

JR山手線外周部の区、中でも北区、足立区、荒川区、墨田区といった下町に木密地域が集中してことが改めて浮き彫りにされている。関東大震災や東京大空襲の惨禍にさらされた東京下町の住民が、今日もなお「著しく危険な密集市街地」で日々の暮らしを送っているのである。