2020/06/21
危機管理の神髄
大ニューヨーク地域を統括する米国赤十字の災害対応の最高責任者として、私は毎年2500件の住宅火災に出動し1万人を支援しているこの専門家なボランティアと職員の献身的チームの一員であった。しかし、職員55人、ボランティア3000人、活動拠点、倉庫と2時間稼働の緊急通信センターとEOC(災害対策司令所)を持ったこの驚くべき組織でも、ニューヨークの被災地区の人たち対して、災害直後の数時間に人道的な救済に必要なことごとの表面をひっかくことすらできないのである。これは、この偉大な国の中の赤十字のどの災害チームにも言えることだ。例外もなく。
米国赤十字は、大災害直後の数時間以内に、人道的救済の使命を果たすのに必要なリソースを持っていないのである。
これは、他のどの非政府組織(NGO) 、災害後に被災者を助ける信仰団体やボランタリー団体も含めても言えることである。問題は、もしあなたが今日市長や郡幹部や市会議員に、誰が災害の後にあなたの近隣で人道的救済を提供する責任を負うのかと尋ねたらば、彼らは米国赤十字を指名するであろうということである。
つまり、米国中でわれわれはその仕事ができない組織に頼っているのである。
一般の人たちが期待し、法律が要求することができない体制は危機状態にある体制である。2005年9月、世界は、この地球上で最も豊かで最も強力な国が、スーパードームの地獄に自国民を見捨てたのを見守っていた。現実には、超ハリケーン・カトリーナからに次に来るカタストロフィーが迫っていたのである。
(続く)
翻訳:岡部紳一
この連載について http://www.risktaisaku.com/articles/-/15300
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/02
-
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方