2020/06/26
企業をむしばむリスクとその対策
□対策のポイント:スタンダードプレコーション
飛沫感染防止の観点では、「できる限り2メートルを目安に、一定の距離を保てるよう作業空間と人員配置について最大限の見直しを行う」ことが理想です。しかし、立地条件、空間条件、設備の配置場所等によっては現実的に距離を取ることができない場合もあるでしょう。その場合には、
●換気の悪い場所で
●複数名が
●お互いの距離を取らずに
●マスクやフェイスシールドを着用することなく
●声を出したり荒い呼吸を続ける状況を作らない
ための対策を社内でとれるようにしておきます。「これからの季節、作業場では暑くてマスクなどしていられない」という環境であれば、一定の距離を開けての作業が必須となる一方、適度な距離が保たれている限り、作業員のマスクは義務とはしない、というのが飛沫感染防止の考え方になります(注:マスクを着用し、距離を取った上での作業がベストではあります)。
接触感染防止の観点では、医療機関内で感染防止策として用いられている「標準予防策(スタンダードプレコーション)」の考え方が役に立ちます。これは「全ての人は伝播(でんぱ)する病原体を保有していると考え、予防策を取る」ものですが、新型コロナウイルスの場合には一般企業でもこの考え方は有効です。今回のウイルスは無症状の感染者も多くいるという事実から「ウイルスはそこら中にいる(ある)」と考えて行動するのです。
具体的には「仕事中や作業中に触れた机や椅子、ドアノブ、電気や機械の各種スイッチ、PCのキーボードやマウス、電話などにウイルスが付着している。その場合の予防策はなんといっても『手洗い」に尽きる。しかし何かに触るたびに手洗いをするわけにはいかない。だから仕事中には『顔を触らない』ようにしなければならない」という行動と、その周知になります。ただし、「人は無意識に顔を触っています。そのうち、目、鼻、口の粘膜は44%を占めています」(出典:厚労省「国民の皆様へ(新型コロナウイルス感染症)」)とも言われているので、人が手で頻繁に触れる場所の定期的な消毒も必須な対策です。
その一方、人が手で頻繁に触れる以上、常に無菌の状態に保つのは不可能です。企業としては、社員がこまめに手洗いをする際のせっけんの設置、手洗い啓発のためのポスターの貼付、手洗いまではできない場合のアルコールを用いた手指の消毒のため、社内の多くの場所にアルコール消毒液を設置する、そして、手洗い前に顔を触るのはできるだけ控えること、の周知などの対策も必要になるでしょう。
社会・経済活動のレベルを一段階上げるということは、それに応じて感染リスクもこれまで以上に上がることにもなります。そのために企業はさらなるに感染防止対策に力を入れなければなりません。各種ガイドラインに沿った対策を、可能な限り取ることは社会のためにも大切なことです。しかしなから、当然、ガイドラインに書いていることを全て実施できない企業も多いはずです。その際には「できることはやるが、できないことは仕方がない」と考えるのではなく、感染経路遮断のために自社でできることは何か?の観点から、対策を打っていただきたいと思います。
(注)この記事では、新型コロナウイルスについて2020年6月24日時点での科学的知見から有効とされる感染対策について解説しています。今後、さらに明らかになる科学的知見によっては、ここで紹介する対策が過剰もしくは過少と判断される可能性もありますのでご了承ください。
今回のテーマ:管理職・一般社員のハザードリスク

企業をむしばむリスクとその対策の他の記事
おすすめ記事
-
「自分の安全は自分で」企業に寄り添いサポート
海外赴任者・出張者のインシデントに一企業が単独で対応するのは簡単ではありません。昨今、世界中のネットワークを使って一連の対応を援助するアシスタンスサービスのニーズが急上昇しています。ヨーロッパ・アシスタンス・ジャパンの森紀俊社長に、最近のニーズ変化と今後の展開を聞きました。
2025/08/16
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
-
三協立山が挑む 競争力を固守するためのBCP
2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。
2025/08/11
-
アイシン軽金属が能登半島地震で得た教訓と、グループ全体への実装プロセス
2024年1月1日に発生した能登半島地震で、震度5強の揺れに見舞われた自動車用アルミ部品メーカー・アイシン軽金属(富山県射水市)。同社は、大手自動車部品メーカーである「アイシングループ」の一員として、これまでグループ全体で培ってきた震災経験と教訓を災害対策に生かし、防災・事業継続の両面で体制強化を進めてきた。能登半島地震の被災を経て、現在、同社はどのような新たな取り組みを展開しているのか――。
2025/08/11
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/05
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/08/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方