2020/09/03
企業をむしばむリスクとその対策
□対策のポイント:実質的な対話の要素
この取りまとめで面白いのは、企業と投資家の「対話」について、対話そのものの意義を再検討してるのと同時に、「実質的な対話の要素とは何か?」が整理されていることです。
具体的に①対話の原則、②対話の内容、③対話の手法、④対話後のアクションという四つの観点から整理されており、それそれの観点で、要素の整理と同時に、この検討会の委員を務めているいくつかの会社での投資家との対話の事例が紹介されています。
例えば、③対話の手法では、「重点的に対話すべき投資家を特定した後、相手の属性や目的に応じて適切な対応者(CEO、社外取締役、IR担当者など)を設定していること」といった整理に加え、「相手の属性や目的に応じた対話者や対話手段の設定の例」として、コニカミノルタ株式会社や、セブン&アイホールディングスの事例などが参照できます。
さらに、建設的かつ実質的な対話の在り方につき、企業同士、投資家同士、企業と投資家などが継続的に情報を共有し、議論を重ねていく「場」の設置にも言及していて、特に、地方企業や時価総額が相対的に小さい企業も巻き込んでいくことが重要とされています。
今後は、このサスティナビリティトランスフォーメーション(SX)の提言や「実質的な対話の要素」を普及するため、これらを実際のアクションに落とし込むための具体的な経営の在り方、対話の在り方、企業が自社の置かれた状況に応じて実質的な対話の要素を弾力的に取り入れていく手法や、それを示す指標・KPIなどについて、さらに検討を深めていく予定だということです。
事例でいえばA社およびBさんは、市場成長率や自社のシェアなど外部環境の変化について比較的予測しやすい数年後という時間軸を前提とした対話ではなく、環境変化の不確実性が高まりを見据えて、前提としている時間軸を意識的に 5~10年という長期の時間軸に引き延ばした上で投資家との対話をしていく必要があるといえるでしょう。このような取り組みは投資家の方も不慣れであることが多いため、最初は齟齬が生じるかもしれませんが、企業・投資家が共通して「長期の時間軸」を前提に対話を行っていくことが今後の課題になるのかもしれません。
この検討会の今後の提言を引き続き注目していきたいと思います。
今回のテーマ:「戦略リスク」「経営者・管理職」
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