2022/09/09
事例から学ぶ
富士山噴火も視野に入れたオールハザード型へ

全国にパチンコホールを展開するダイナム(本社、東京都荒川区)は、地震災害だけでなく、富士山噴火や大規模水害などによる首都機能喪失も視野に入れたBCP見直しを進めている。東日本大震災では、多くの店舗が被災し、津波による被害も甚大であった。新型コロナ対応では徳島県と高知県をのぞく全都道府県で店舗の休業が余儀なくされた。こうした危機に再び襲われても、従業員と顧客の命を守りながら、地域に必要とされる会社を目指し、資金面も含めたBCPを再構築している。2回に分けて同社のBCPへの取り組みを紹介する。
半年営業が止まっても経営が続けられる計画
BCPを策定したのも東日本大震災の後だ。2016年までかけて、首都直下地震を想定したBCP計画書を作成。「本社機能の継続なども盛り込まれていたが首都直下地震だけを想定したものだった」(阿部氏)。その後、南海トラフ地震や、豪雨・台風、感染症も想定に加え、現在では、これらを網羅した形での「オールハザード」対応のBCPを目指し改訂作業を進めている。
「一番悩んでいるのは富士山の噴火。ライフラインの停止が長期化すると、半年程度、営業ができなくなることも考えられます。その時、どうするかという踏み込んだ形のBCP計画書をつくりなさいという指示が経営から出されている」と阿部氏は語気を強める。
一般的にBCPを構築する際は、会社が行っている様々な事業の中から、災害時でも特に継続すべき中核事業を選定し、仮に当該事業が停止した際、当該事業をいつまでにどの程度のレベルまで戻すか目標復旧時間・レベルを設定する。大きな被害を受けないように防災面を強化するなど事前対策を施すことはもちろんだが、仮に経営資源が多大な被害を受けても早期に事業を再開させる方法などを検討する。
しかし、ほぼすべての業務がパチンコ店の運営に紐づいている同社では、中核事業を絞り込むにも絞り込みようがないという。いつまでに復旧させるかについても、災害後に社会情勢を鑑みながら決める必要があるため、災害前に決めるようなことはできない。もちろん、代替拠点という考え方も無理がある。
ちなみに、新型コロナウイルス感染症の発生時は、徳島県・高知県をのぞく全都道府県で店舗の休業が余儀なくされ、東京では約2カ月間も店舗を開くことができなかった。
こうした経験も踏まえ、まずは、富士山噴火を想定し、実際にどの程度の店舗で経営ができなくなるのか、それがどの程度続くのかをシミュレーションし、その間、他の店舗でどのくらいカバーができるのかを計算するとともに、財務面でどの程度の資金を調達できるのかを合わせて検討している。
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