2018/07/10
危機管理の要諦
被災状況を確認する
復旧で最初に行うのが被害状況の確認。その際、何がどう被災したのかを撮影して記録として残しておいた方がいい。その上で、それぞれについて、どの程度の復旧費用・復旧時間が必要になるかをメーカーや建設会社などに問い合わせながら確認をしていく。BCPをあらかじめ策定している企業なら、取引先などをあらかじめ整理しているため連絡はスムーズに行えるはずだが、BCPを策定していなければ業者を調べながら連絡を取ることになる。もちろん、火災保険(水災特約付)に加入していれば、保険会社にも連絡をして、保険の手続きを進める。
復旧の優先順位を決める
復旧にあたっては、まず、何の事業から優先的に再開するのかを決めることが重要になる。インフラが大きく被災し、社員も十分集まらない中では、すべての事業を同時に再開させるのは難しいためだ。これも、BCPを策定している企業は、あらかじめ「重要業務」として決めているはずだが、それでも、実際には、重要業務を決めていたとしても、その時々の状況に応じて、何の事業から再開するかは顧客の要望や需要により異なり、計画通りにはいかないことも想定されるため、改めて見直してみることが必要になる。
BCPを策定していない企業でも、顧客への影響、社会的な影響、市場への影響、あるは法規制による制約などを鑑みながら、どの事業を優先的に再開させるかを決定することになる。
例えば、先のオイルプラントナトリは、東日本大震災時、ガソリンや重油が社会全体的に不足していたことから、重油再生業務を優先して復旧させ、それ以外のプラスチック再生事業や研究事業などは停止させた。
現地での復旧か代替生産かを決める
事業再開にあたってもう1つ重要になるのが、事業再開の具体的な方法を決定することだ。BCPの策定では、自社が事業不能に陥った事態を想定し、現地での早期復旧、あるいは別の場所での代替生産など、いくつかの事業継続方法を考え準備しておく作業がある。が、BCPを策定してない企業なら、その場で復旧方法を決めて取り組むことになる。
仮に代替生産方法を決めていないとしても、協力会社などで自社の代わりに製品を製造してくれるような企業があれば、現地が被災した状況でも事業を継続させることは可能だ。例えば建設会社や工務店で自社が被災してしまっても、協力会社から重機などを借りて、顧客対応にあたることは理論的には可能になる。先に紹介したオイルプラントナトリは、自社での重油再生処理ができなくなったため、その業務を県外の同業者に委託した。
危機管理の要諦の他の記事
おすすめ記事
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/17
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方