裁判手続の基礎知識―流れと概要―【少額訴訟編】
少額訴訟の流れと概要

山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2024/02/07
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
前回、民事訴訟では求められているプロセスを大幅に省略して、簡易・迅速に債務名義を取得させ強制執行を可能にする制度として、支払督促をご紹介しました。今回は、簡易・迅速な手続という点で支払督促と共通する少額訴訟について取り上げてみたいと思います。
少額訴訟とは、「訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴え」(民事訴訟法(以下、法名省略)368条1項本文)について、簡易裁判所において簡易・迅速な手続を用いた審理を経て判決を得る制度をいいます。例えば、X社がY社に対して貸金50万円の返還を求めている場合に少額訴訟を利用することができます。
少額訴訟を利用する際の制限として、同一の原告は、「同一の簡易裁判所において同一の年に」10回までしか、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができないとされています(368条1項但書、民事訴訟規則223条)。
これに関して、「少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければなら」ず(368条2項)、この申述の際に「当該訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理及び裁判を求めた回数を届け出なければならない」ものとされています(同条3項)。
これに対し、「被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができる」ものとされ(373条1項本文)、この申述があった時に、訴訟は「通常の手続に移行する」ものとされています(同条2項)。
このため、少額訴訟としての訴状の送達を受けた場合には、後述するような点を踏まえて、そのまま少額訴訟として対応するのか、上記の申述をして通常の訴訟手続に移行させるのかを判断する必要があります。
支払督促には、請求の目的の価額に上限はありませんでしたし、利用回数の制限もありませんでしたが、少額訴訟には、訴額や利用回数に制限があるといった点で、両者に違いがあります。一方、異議や申述により通常の訴訟(手続)へ移行するという点は共通しています。
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