「波風立てず穏便に」がリスクを増大させる
第65回:経営リスクを最小化する交渉力(1)
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2024/06/14
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
混沌とする社会情勢において、企業経営上のリスク想定も多様化しており、実態を把握しづらいのが実情であろう。企業が事業を営む上で必要不可欠な取引先との関係も、リスクの実態が把握しづらい一つであろう。
例えば、反社会勢力との取引が確認されると社会的信頼を失墜するリスクがあることを疑う人はいない。現在では、この種のコンプライアンス対応はおおよそ浸透しているのではないだろうか。
また、輸出貿易に関するかつてのココム規制や、現代の該否判定などによる法規制の範囲は明確に運用されているだろう。しかし、これらの対応が必要条件であっても十分条件ではなくなっていることは、もはや当たり前である。
判定の元になる価値観自体、国や地域によって大きく異なる。それは当然なのだが、表向きは見えにくく装われていることが原因の一つである。グローバル事業環境下では、それぞれの価値観を理解した上での事業展開が必要不可欠であり、サプライチェーンも含めたネットワーク全体でのリスク思考が重要になっているが、実際の対応は口でいうほど簡単ではない。
それは表面上に見えている事象だけでは計り知れず、同じ言葉で表現し説明されていても、実態は異なる例が多いからだ。このことを認識する必要があるのだが、実は頭では分かっていても抜け出せない構造にはまり、見て見ぬ振りをしているともいえるだろう。
悪意ある偽装という事例もあるだろうが、それなら実は分かりやすい。それよりも複雑なのは、経営としては強い意思を持って打ち出した指針を、現場運用のなかで担当者、ときには現場責任者が、個々の事情を鑑みた現実論という言い訳を盾に、忖度を働かせて、表面上はきれいに仕上げて発信する。これは「本音と建前」が悪いほうに現れた事象かもしれない。
昔であれば「本音と建前」は無用な争いを避け、スムーズにビジネスを進めるために有効ではあった。だが、価値観が異なりかねないほどの複雑な環境では、間違いなく潜在リスクになる。筆者は組織構造とその構成人材が善意で生み出すロンダリングだと考えている。
そもそも「本音と建前」を使い分けて、波風立てずに穏便に事を済ませる手法は、前提条件として価値観が同一であることが共有され、信頼関係が性善説にもとづいて成立している状況で、はじめて有効になると考えるのは筆者だけだろうか。
再考・日本の危機管理-いま何が課題かの他の記事
おすすめ記事
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/15
防災は面白くないと広がらない
地震が起きたとき、スマートフォンに通知された情報を頼りに避難を判断することが多いだろう。緊急地震速報の情報から、いまどのように動くべきかを判断できる、そんな身近な危機管理を習慣づけた1 社が、アールシーソリューション(東京都新宿区)だ。2010 年に提供開始したスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」は、緊急地震速報を受信できるアプリとして多くのユーザーが利用している。代表取締役の栗山章さんは、数多くのユーザーに防災の重要性を広めてきた一方で、ビジネスとして成り立たせる難しさにも直面してきたという。これまでのサービス開発の経緯や、防災ビジネスへの価値観を聞いた。
2026/09/09
被災施設への再入場判断「戻ってはいけない」では解決しない避難後の問題
大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。 国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある
2026/09/09
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/09/07
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方