2025/01/04
防災・危機管理ニュース
【ロンドン時事】欧州各地の観光都市が旅行者急増によるオーバーツーリズム(観光公害)に悲鳴を上げている。コロナ禍明けの旺盛な旅行需要を背景に、格安航空会社(LCC)や大型クルーズ船の利用客が押し寄せ、街の混雑や交通渋滞、物価高などが深刻化。日々の暮らしを脅かされた地元住民の反発は大きい。
「観光客は帰れ!」。世界遺産のサグラダ・ファミリア教会で知られるスペイン北東部のバルセロナでは昨夏、住民による「反観光」デモが相次いだ。数千人の参加者はシュプレヒコールを上げながら街中を行進し、旅行者に向けて水鉄砲を撃つなどした。
怒りの最大の要因は住宅費高騰だ。観光客向けの短期賃貸物件が増えたことで住宅需給が逼迫(ひっぱく)し、家賃は過去10年で7割近く上昇。市は2029年までに観光客への短期貸し出しを禁じ、約1万戸の住宅を確保する計画だが、即効性のある対策を打ち出せていない。
イタリア北部の「水の都」ベネチアは24年4月、日帰り観光客に5ユーロ(約810円)の「入場料」を課す試みを始めた。25年は適用日数を前年の29日から54日に拡大する方針。団体客を25人以下に制限する措置も導入しており、観光公害などによる世界遺産の「危機リスト」入りを回避しようと躍起になっている。
オランダの首都アムステルダムはコロナ禍後、観光客数の上限を年2000万人に設定。観光税引き上げやクルーズ船の受け入れ制限、ホテルの新規建設禁止といった対策を講じたものの、観光客の流入は止まらない。酒や大麻で高揚した若いグループ客の迷惑行為も、住民の怒りの火に油を注ぐ。
ただ、観光業は各都市にとって投資や雇用を生み出す経済の柱だ。欧州各国の観光当局で構成する欧州旅行委員会(ETC)によると、24年の観光業による経済効果は欧州全体で2兆4000億ユーロ(約389兆円)に上る見通し。経済面の恩恵を受けつつ、住民生活を守るため、ETCは「オフシーズンの旅行や、あまり知られていない観光地への訪問」を促す施策が必要だとしている。
〔写真説明〕サグラダ・ファミリア教会の前を行き交う観光客=2024年7月、スペイン・バルセロナ(AFP時事)
〔写真説明〕オーバーツーリズム(観光公害)への抗議デモに参加する人々=2024年7月、スペイン・パルマ(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)


防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
阪神・淡路大震災30年 いま問われるもの
日本社会に大きな衝撃を与えた阪神・淡路大震災から30年。あらゆる分野が反省を強いられ、安全を目指してさまざまな改善が行われてきました。しかし、日本社会にはいま再び災害脆弱性が突き付けられています。この30年で何が変わったのか、残された課題は何か。神戸大学名誉教授・兵庫県立大学名誉教授の室﨑益輝氏に聞きました。
2025/02/06
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/02/05
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/02/04
-
-
-
-
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方