裁判手続の基礎知識―流れと概要―【実践編】
債権回収の事例に基づいて

山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2025/02/20
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
本連載では「裁判手続の基礎知識」のシリーズとして、民事通常訴訟、民事保全、民事執行法上の財産調査等についてご説明した一連の記事があります。今回、その実践編ともいうべき位置づけで、債権回収の事例を基に、関係する主な手続の流れについてご説明したいと思います。
上のような売買契約が締結され、X社は、目的物である加工食品をY社に納品したものの、Y社は、売買代金1000万円を支払いません。内容証明郵便により代金の支払いを請求しても、Y社からの回答や支払いが全くありません。そこでX社は、顧問弁護士Lに委任して、Y社に対して、裁判手続により売買代金の回収(債権回収)を行うことになりました。
依頼を受けた顧問弁護士Lは、売買代金の支払いを求める訴訟を提起することとしました。しかし、Y社がX社からの内容証明郵便に無反応いうことで、将来、民事執行(強制執行)が必要となる可能性がある上、それまでにY社の財産が費消される可能性があると考え、これを防ぎ、将来の強制執行に備える必要があると判断しました。
そこで、まずY社の取引銀行としてα銀行β支店があることが分かっていましたので、Y社の同預金債権を仮差押えすべく、民事保全の手続として、債権仮差押命令の申立てを行いました。無事に、裁判所から債権仮差押命令が発令されたところ、100万円の仮差押えに成功することとなりました。
裁判手続の基礎知識―流れと概要―【民事保全編】
続いて、顧問弁護士Lは、民事通常訴訟として、X社を原告、Y社を被告とする、売買代金支払請求訴訟を提起しました。その際、X社の主張を記した訴状と、X社の主張を裏付ける証拠(売買契約書等)等を、裁判所用とY社用とで各2部ずつ用意して、裁判所に提出することになります。
訴訟において、被告が争えば、原告・被告の双方が期日において主張・立証を行うことになりますが、X社・Y社間の上記訴訟については、Y社が答弁書という書面を提出しないまま初回期日を欠席したことにより、全部認容判決(全面勝訴判決)が言い渡され、また、Y社から控訴がなされなかったために、同判決は確定しました。
裁判手続の基礎知識―流れと概要―【民事通常訴訟編】
弁護士による法制度解説の他の記事
おすすめ記事
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方