2025/06/09
防災・危機管理ニュース
【ニューデリー時事】インドのモディ政権は9日で3期目発足から1年。昨年の下院総選挙で与党インド人民党(BJP)は、2014年の同政権発足以来初めて単独過半数を割り込んだ。しかし、その後は主な地方選で連勝。パキスタンとの国境紛争を抱えながらも、インドは高い経済成長を維持。国内総生産(GDP)で日本を上回り「世界4位」となることが視野に入り、インドの国際社会での存在感はますます高まっている。
◇連立政権で支持回復
BJPの単独過半数割れは、強権的でヒンズー至上主義を掲げるモディ氏に対する不満を反映した形となり、同氏の威信の低下がささやかれた。総選挙後、モディ氏は政権維持のためBJPを含む15党の連立政権を構築。連立に参加する各党の地盤に手厚い予算配分を行うなどして全国的に支持を回復し、各州の議会選で続けて勝利した。特にデリー首都圏では、27年ぶりにBJPが政権を奪還した。
モディ政権の支えは経済の発展だ。モディ氏はGDPを5兆ドル(約725兆円)にすることを目標としてきた。国際通貨基金(IMF)の予想によると、25年度のインドの経済成長は6.2%、GDPは約4兆1900億ドル(約607兆円)。GDPは僅差で日本を抜くとされている。これを踏まえ、モディ氏は5月27日に西部グジャラート州で演説し、「私たちの経済は今や世界4位となった。誰もが日本を抜いたことに満足する」と早々と宣言した。
強固な政権基盤を背景に、モディ氏は外交でも着実に歩みを進めた。日本とは、米国、オーストラリアを交えた枠組み「クアッド」を通じて関係を強化。20年の軍事衝突以来、険悪な関係が続いていた中国の習近平国家主席と5年ぶりに会談し緊張緩和に努めた。
◇パキスタンと対立継続
モディ政権にとって懸案は建国以来の宿敵であるパキスタンとの対立だ。今年4月下旬に起きたインド側カシミールでのテロをきっかけとして、両国は戦闘を開始。米国の仲介で5月10日に停戦合意が実現したものの、互いの不信感は根強い。核兵器を持つ両国が全面戦争に突入すれば、インド経済だけでなく世界的に悪影響が及びかねない。
内政面でも課題はある。BJPにとって、全国一律に婚姻や相続などについて定めた「統一民法典」の施行を実現することが「悲願」となってきた。インドでは各宗教の伝統や慣習が尊重され、イスラム教徒には一夫多妻制が認められてきた。画一的な制度を導入することになれば、強い反発が予想されている。
〔写真説明〕インドのモディ首相=6日、北部カトラ(同国政府提供)(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

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