中間免震層にある積層ゴムアイソレーター

帰宅困難者問題と再開発への期待

「ダイヤゲート池袋」はテナントだけでなく、池袋エリアの安全・安心上も重要な役割を担う。1月に西武鉄道は豊島区と帰宅困難者対策の協定を締結した。一時滞在施設・一時待機場所の提供・運営や水や食料といった物資の提供、さらには備蓄のための倉庫や場所の提供が主な内容。この協定の役割を果たすのが「ダイヤゲート池袋」となる。一時滞在施設などに移動する前の一時待機場所として約1000人分、3日間の一時滞在場所として約270人分のスペースと備蓄を用意する。一時待機場所は2階の1300平方メートルのデッキスペース、一時滞在場所は1階エントランス付近の453平方メートル。マンホールトイレを5基用意するほか、地下1階には帰宅困難者用の備蓄倉庫も設置。今後、費用の6分の5を補助する東京都の制度も活用し、270人は3日分、1000人は1日分の備蓄品をそろえる予定。西武プロパティーズでは帰宅困難者受け入れのためのマニュアル作りや訓練も今後進める。

地下1階にある帰宅困難者用の備蓄倉庫。今後、備蓄品を入れる

豊島区によると首都直下地震が発生した場合、池袋駅から半径2キロメートルで約8万4000人の帰宅困難者が発生すると予想。そのうち買い物客や訪日外国人など、約5万3000人の行き場がないだろうとみている。高齢者などのため少なくとも2万7000人分は一時滞在施設を確保したいとしているが、区の施設で2000人分、都の施設も1500人分しか確保できていない。協定を結んでいる民間施設は「ダイヤゲート池袋」を除いて1万6000人分。まだ目標には達しておらず、今後も再開発などで新たな建物ができる際に働きかけを行っていく方針。

豊島区では2015年にできた計画を基にした「池袋駅周辺地域都市再生安全確保計画」があり、その中で一時滞在施設についても取り上げられている。池袋駅周辺エリアは都市再生特別措置法に基づく都市再生緊急整備地域に2015年に政令により指定を受けている。指定エリアでは条件により容積率の割り増しなど土地利用緩和を受けられ、再開発が行いやすい環境となっている。2020年には旧区役所跡地に東京建物が中心となり高層ビルやホールなどを整備し、一時滞在施設にもなるとみられる「Hareza(ハレザ)池袋」が竣工予定。「ダイヤゲート池袋」についてもこの地域内にあり、計画の段階で一時滞在施設について話し合いが行われたという。同ビルは都市再生特別措置法に基づき、金融や税制面での優遇を受けられる民間都市再生事業の国土交通大臣認定も2015年に受けた。豊島区では一時滞在施設確保のほか旧造幣局跡地には約1.7ヘクタールの防災公園整備計画も進めている。