2019/03/26
しば副編集長のmi vista

私鉄の防災対策の意義
西武グループにおいて、西武鉄道は各自治体の一時滞在施設への避難を想定しており、駅で帰宅困難者を受け入れることは想定してはいないという。それでも全線で1万1500個の備蓄品は用意。豊島区以外に西東京市、東久留米市とも帰宅困難者の対応に関する協定書を締結している。また西武プロパティーズの物件では「ダイヤゲート池袋」以外にも、西武沿線ではないが西武池袋線と相互乗り入れをしている東京メトロ有楽町線永田町駅近くにある「東京ガーデンテラス紀尾井町」が2012年に千代田区と協定を結び、2000人の帰宅困難者受け入れの態勢を整えている。同社はさらに所沢駅の商業エリア「グランエミオ所沢」の2020年の第2期エリア開業後は駅スペース一帯で1200人の帰宅困難者を受け入れる計画を立てている。
都心のターミナル駅に百貨店やオフィスビルを、沿線で住宅や娯楽施設の開発を進め人口を増やし、通勤・通学客による安定した運賃収入を得ていくのが私鉄のビジネスモデルとしてわが国の都市部には定着してきた。しかし人口減と高齢化が進み、転機が訪れている。線路や駅、車両といった設備の強靭化に加え、万が一災害で運行できない時間があっても、安心して過ごせるスペースや備蓄を用意するといった防災対策は、新たに住民を呼び込むための私鉄の大きなアピールポイントになるのではないだろうか。西武鉄道・東武鉄道・JR東日本・東京メトロの4社が乗り入れる池袋駅は1日平均約267万人、西武鉄道だけでも約49万人(2017年度)が利用。そこにできた「ダイヤゲート池袋」での帰宅困難者受け入れは利用者の安全確保からみても大きな意味がある。西武HDの後藤社長は25日、記者説明会にも出席し防災について「安全・安心は当社の最優先事項。帰宅困難者対策も信頼のほか沿線価値の向上にもつながる」と語った。
■ニュースリリースはこちら
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9024/announcement/49198/00.pdf
(了)
しば副編集長のmi vistaの他の記事
おすすめ記事
-
-
カムチャツカ半島と千島海溝地震との関連は?
7月30日にカムチャツカ半島沖で発生した巨大地震は、千島からカムチャツカ半島に伸びる千島海溝の北端域を破壊し、ロシアで最大4 メートル級の津波を生じさせた。同海域では7月20日にもマグニチュード7.4の地震が起きており、短期的に活動が活発化していたと考えられる。東大地震研究所の加藤尚之教授によれば、今回の震源域の歪みはほぼ解放されたため「同じ場所でさらに大きな地震が起きる可能性は低い」が「隣接した地域(未破壊域)では巨大地震の可能性が残る」とする。
2025/08/01
-
巨大地震後に噴火 カムチャツカ半島・クリュチェフスカヤ火山地震と噴火の関係は?専門家に聞く
7月30日に発生した、カムチャツカ半島沖を震源とするマグニチュード8.7の地震は、遠く離れた日本の太平洋沿岸一帯に、広く警報を発令させるほどの津波をもたらした。さらにカムチャツカ半島では地震発生後に、クリュチェフスカヤ火山が噴火した。巨大地震がこの噴火の引き金になったのか。地震と噴火の関係について、火山と地震の観測が専門で、調査のために約20回もカムチャツカ半島に足を運んでいる、北海道大学理学研究科附属地震火山研究観測センター教授の高橋浩晃氏に聞いた。
2025/07/31
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/07/29
-
-
-
「想定外」を乗り越える力コカ・コーラ ボトラーズジャパンが挑む、危機管理の再構築
コカ・コーラ社製品の製造、販売、自動販売機のオペレーションなどを手掛ける、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社は、2024年の能登半島地震を機に、危機管理体制の再強化に乗り出している。直接的な被害は免れたものの、系列他社の被災や支援要請の集中を通じて、情報伝達や意思決定、業務の優先順位といった多くの課題が顕在化した。同社は今、グローバル基準の危機対応フレーム「IMCR」の再徹底を軸に、全社一丸の再構築に踏み出している。
2025/07/21
-
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方