一時滞在施設となる1階エントランス付近

私鉄の防災対策の意義

西武グループにおいて、西武鉄道は各自治体の一時滞在施設への避難を想定しており、駅で帰宅困難者を受け入れることは想定してはいないという。それでも全線で1万1500個の備蓄品は用意。豊島区以外に西東京市、東久留米市とも帰宅困難者の対応に関する協定書を締結している。また西武プロパティーズの物件では「ダイヤゲート池袋」以外にも、西武沿線ではないが西武池袋線と相互乗り入れをしている東京メトロ有楽町線永田町駅近くにある「東京ガーデンテラス紀尾井町」が2012年に千代田区と協定を結び、2000人の帰宅困難者受け入れの態勢を整えている。同社はさらに所沢駅の商業エリア「グランエミオ所沢」の2020年の第2期エリア開業後は駅スペース一帯で1200人の帰宅困難者を受け入れる計画を立てている。

都心のターミナル駅に百貨店やオフィスビルを、沿線で住宅や娯楽施設の開発を進め人口を増やし、通勤・通学客による安定した運賃収入を得ていくのが私鉄のビジネスモデルとしてわが国の都市部には定着してきた。しかし人口減と高齢化が進み、転機が訪れている。線路や駅、車両といった設備の強靭化に加え、万が一災害で運行できない時間があっても、安心して過ごせるスペースや備蓄を用意するといった防災対策は、新たに住民を呼び込むための私鉄の大きなアピールポイントになるのではないだろうか。西武鉄道・東武鉄道・JR東日本・東京メトロの4社が乗り入れる池袋駅は1日平均約267万人、西武鉄道だけでも約49万人(2017年度)が利用。そこにできた「ダイヤゲート池袋」での帰宅困難者受け入れは利用者の安全確保からみても大きな意味がある。西武HDの後藤社長は25日、記者説明会にも出席し防災について「安全・安心は当社の最優先事項。帰宅困難者対策も信頼のほか沿線価値の向上にもつながる」と語った。

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