2019/04/12
危機管理の神髄
スマートシステムは我々をバカにする
災害専門家が心配するのは停電そのものより、その後のことである。広域の停電に際して何万戸もの世帯の状況を改善するために政府ができることはほとんどない。2006年のクイーンズでの停電のときには、市の職員がお年寄りなどの家を1軒1軒たずねて氷とボトルウォーターを手渡して回った。我々は電気が復旧するのを今か今かと気をもみながら待つしかなかった。
問題は停電のとき何をすべきかを大半の人が知らないことである。アストリアやロングアイランド市の人でバックアップの計画を持つ人、あるいはインターネットのない72時間が何を意味するかを知る人はほとんどいなかった。食事のために狩猟のできる人はさらに少ない。シームレスのアプリなしに食糧を自給できる人は、ウイリアムズバーグの狩猟用の鳥と同じくらい珍しい。
使わなければ失う
今日、スマートシステムとロボットのような”人工的なエージェント“が人間の仕事の代替をする割合は高まる一方である。例えば病気の診断、自動運転、技術レポートの作成などがある。同時に我々は広範囲にわたるこれらの専門的な技能を失いつつある。ランド・コーポレーションのオソンデ・オソバ氏はこれを技能喪失効果と呼ぶ。我々の集団としてのレジリエンスをむしばむ自動化への依存の傾向は加速され続けている。グーグルやアマゾンなどによる莫大な投資は、我々がとても把握できないまでのAI技術の飛躍的な前進をもたらした。オソバ氏によれば、21世紀の生活のあらゆる側面において自動化への傾倒は強まるばかりである。AIの社会経済的な衝撃のスピードと範囲を「重要で前例のない」ものであると言う。
現代のインフラは人間の渇望を驚くべき巧妙さで満足させてくれる。安楽、性急な欲求の充足、楽しい娯楽などである。そのようにして日を過ごすにつれて、我々はインフラの中断にますます脆くなる。同時にこれらのシステムも中断に弱くなる。最も影響があるのは、もちろんインターネットである。
(続く)
翻訳:杉野文俊
この連載について http://www.risktaisaku.com/articles/-/15300
おすすめ記事
-
過疎高齢化地域の古い家屋の倒壊をどう防ぐか
能登半島地震の死者のほとんどは、倒壊した建物の下敷きになって命を落とした。珠洲市や輪島市の耐震化率は50%程度と、全国平均の87%に比べ極端に低い。過疎高齢化地域の耐震改修がいかに困難かを物語る。倒壊からどう命を守るのか。伝統的建築物の構造計算適合性判定に長年携わってきた実務者に、古い家の耐震化をめぐる課題を聞いた。
2024/03/28
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月26日配信アーカイブ】
【3月26日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:四半期ニュース振り返り
2024/03/26
-
-
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月19日配信アーカイブ】
【3月19日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:副業・兼業のリスク
2024/03/19
-
リスク担当者も押さえておきたいサイバーセキュリティ対策の最新動向
本勉強会では、クラウド対応のサイバーセキュリティ対策の動向を、簡単にわかりやすく具体的なソリューションの内容を交えながら解説します。2024年3月8日開催。
2024/03/18
-
発災20分で対策本部をスタートする初動体制
総合スーパーやショッピングモールなど全国各地のイオン系列の施設を中心に設備管理、警備、清掃をはじめとしたファシリティマネジメント事業を展開するイオンディライト(東京都千代田区、濵田和成社長)。元日に発生した能登半島地震では、発災から20分後にオンラインの本社災害対策本部を立ち上げ、翌2日は現地に応援部隊を派遣し、被害状況の把握と復旧活動の支援を開始しました。
2024/03/18
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方