トラウマレスポンスセンターとなった国立病院付近(c2019 International SOS and Control Risks)

気をつけるべき国は他にも

しかし、今回約2年ぶりに組織的かつ大規模なテロが今回スリランカで発生した。これにはNTJがISの支援を受け、急激にテロ実行能力をつけたためとインターナショナルSOSでは分析している。「ISからすれば1回だけの攻撃を成功できればいい。NTJはいわば使い捨てにされた組織」と黒木氏は説明した。

このスリランカのようにあまり大規模でない組織をISが見つけ出し支援し、1回限りでもいいという考え方でテロを起こすという新たな形態が今後も懸念される。背景として共通点がみられるのは2016年7月に日本人も犠牲になったバングラデシュ・ダッカでのテロ。で、実行犯が中産階級の家庭で育ち、高い教育を受けていた人物が現地で実行したということ。また、かつてのISの支配地域のイラク・シリアでトレーニングを受け、帰還した人物がスリランカに帰還し、NTJの活動にもかかわったとされている。

スリランカは70%の仏教徒、少数派として10%のイスラム教徒、7%のキリストがいるが、そこまで宗教間の対立は大きくなかった。今後は報復などが起こることが懸念されるが、こういった社会不和を作ることこそがISの大きな狙いである。

インターナショナルSOSではテロリスクの高い国の条件として、下記を挙げている。

・ISと関係性を公にしていないイスラム過激派組織の存在
・ここ最近でISが犯行声明を出した攻撃が起きてない国
・多くの外国人観光客を呼び込む、強い観光産業の存在
・テロ攻撃の成功が全世界的に報道されるようなニュースバリューがある場所
・潜在的な宗派間の緊張状態
・犯罪組織の存在
・国際的に重要な宗教施設の存在
・最近の紛争の経験
・当局の対テロ能力が低く、対テロ対応について国際的な協力体制が限定的な国

上記の複数の基準を満たすのはインド、マレーシア、モルディブ、モロッコ、タンザニア、タイ、トリニダード・トバゴ、チュニジア、トルコで、特に注意が必要と分析。トリニダード・トバゴは中東や欧州から離れているが、現地に根付いたスンニ派サラフィー主義コミュニティがあり、人口に対して多くの国民がISに参加するためにシリアに渡航している。また、SNSが非常に普及しているほか、観光客が訪れやすい目的地となっており、条件を満たしているという。