2019/10/24
昆正和のBCP研究室
■対策本部運営に不可欠な情報アイテム
BCPにおける対策本部の活動の要は、突き詰めれば「情報力」にある。つまり「意思決定に必要な情報をコンスタントに集める」とともに、「事業を取り巻く利害関係者に向けて適切な情報をタイムリーに発信する」という双方向の活動が中心となる。東日本大震災や熊本地震のとき、混乱やパニックに陥った現地の企業が「想定外の事態が起こってうまく動けなかった」と述べている。そうした事態の背景には、情報不足や情報の錯綜、情報伝達の遅れなど、一言で言えば情報の取扱いが後手に回ってしまっことも原因としてあっただろう。
では迅速に情報を収集し、発信する手段として、対策本部はどのようなツールを整えておけばよいのだろうか。一方的に情報を受発信する、双方向でコミュニケートする、全員で共有するなど、チャネルや用途はさまざまだが、身近なものでは次のアイテムが考えられる。
まず、オーソドックスなものとして携帯電話/スマートフォン、ポータブルラジオ。電気やインターネットが使えればノートPCが有力なツールであることは言うまでもない。メールやSNS(フェイスブック、ツイッター)、自社ホームページの更新(復旧状況など)、スカイプなどによる簡易なテレビ会議も期待できる。また、収集した情報を補完的に整理したり、共有するためのアイテムとして、ホワイトボード、付せん、紙、ペンなども必須である。製造業や運輸業などでは自家発電機が倉庫でホコリをかぶっている会社も少なくない。非常時に備えていつでも使えるようにメンテナンスしておきたいものである。
情報ツール以外にも対策本部運営に不可欠な備蓄アイテムはいろいろある。対策本部のスタッフが泊まり込む場合に備えて、仮眠スペースと食料(弁当や非常時備蓄による補完)を確保する、毛布やシュラフ(寝袋)を用意するといったことだが、これらについては別の機会に詳しく述べる。
(了)
昆正和のBCP研究室の他の記事
おすすめ記事
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/19
-
-
-
-
「自分の安全は自分で」企業に寄り添いサポート
海外赴任者・出張者のインシデントに一企業が単独で対応するのは簡単ではありません。昨今、世界中のネットワークを使って一連の対応を援助するアシスタンスサービスのニーズが急上昇しています。ヨーロッパ・アシスタンス・ジャパンの森紀俊社長に、最近のニーズ変化と今後の展開を聞きました。
2025/08/16
-
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方