2020/05/08
知られていない感染病の脅威
変異の本体
これらの実験から、鳥類のコロナウイルスであるIBウイルスは、様々な変異を頻繁に起こすウイルスであることが明らかになりました。さらに、変異が起きる要因として、筆者たちは、IBウイルス株は、均一な性質を持つウイルス集団から成り立っているのではなく、様々なバラエティーに富んだ性質を持つ、数多くのsubpopulation(小集団)から構成されているという結論に達しました。
IBウイルス株を構成する様々なsubpopulationのバランスに変化が生じた時に、このコロナウイルスに「変異」という現象が認められる、その変異も様々(抗原性、病原性、臓器嗜好性など)であるということです。
IBウイルスが増殖する環境あるいは宿主の状態が違えば、優勢に増殖するsubpopulationはその都度異なり、優勢に増殖したsubpopulationの性状がその時のウイルス性状としてとらえられるのではないかと考えています。
しかし、筆者たちは、鳥のコロナウイルスであるIBウイルスが、ほ乳類に感染できるコロナウイルスに変わり得るか否かという宿主域を変えることを目的とする生体を用いる実験を行うまでには至らなかったのは現在でも残念に思っています。
同一ウイルス株でも、感染する動物種が異なれば異なる病像を呈することは、鳥インフルエンザウイルスで実験的に私たちは確認しています。また、幼若なヒナにIBウイルスが感染した場合、持続感染が成立することも認めています(前回紹介)。
私たちが鳥類のコロナウイルスを用いた実験で得られた成績が、そのまま今回の新型コロナウイルス肺炎に反映することはないと考えています。しかし、共通する部分もあると考え、紹介した次第です。
養鶏場で興味深いIB発生ケースを私たちは見ています。鶏が示すIBウイルス感染態度は、鶏の飼育状況、特に鶏舎の衛生状態に大きく左右されるようです。
すなわち、飼育密度が高く、飼育環境が劣悪で、衛生状態の悪い汚れた鶏舎で飼育されている、大きなストレスのかかっている鶏にIB生ワクチンを接種した場合(IB生ワクチンウイルス株の鶏に対する病原性は、ほとんど認められなくなるまで高度に減毒されています)、ワクチン接種ヒナに重篤なIBの症状の発現する場合があります。
逆に、衛生状態の行き届いた理想的な環境で飼育されている、病原体に対する抵抗力の備わった鶏にIBワクチンを接種した場合、ワクチンウイルスの鶏への感染力が不十分で、抗体産生が微弱な状態で終始する場合もあります。
このような現象も、今回の新型コロナウイルス感染の場合に共通する部分があるように思われます。
知られていない感染病の脅威の他の記事
おすすめ記事
-
顧客の安全と安心をAIと人のアシスタンスサービスで追求
JTBグローバルアシスタンス(東京都千代田区)は、渡航先でのけがや荷物の紛失、言語の壁など、海外旅行に関わるトラブルを包括的にサポートしてきた。昨今では地政学リスクの高まりに応じ、自社の危機管理ソリューションを生かした出張者や駐在員の安全確保にも注力している。創業35年を機に、AIと人間、それぞれの長所を組み合わせたハイブリッド型サービスの展開を目指す。混沌(こんとん)とした時代の中、海外旅行に伴うリスクを低下させ、旅行者の安全をどのように確保するのか。鈴木章敬代表取締役社長に話を聞いた。
2026/05/19
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/05/19
-
-
-
-
追跡調査中のハンタウイルス感染症原因ウイルスにはどんな特徴が?
世界保健機関(WHO)が5月4日に大西洋を航行中のクルーズ船で乗客3人が死亡し、ハンタウイルスの感染が疑われると発表した。その後、日本人1人を含む乗員と乗客はスペイン領テネリフェ島で下船。各国で追跡調査が行われている。ハンタウイルスは、いったいどんなウイルスなのか。ハンタウイルスに詳しい北海道大学大学院の苅和宏明特任教授に聞いた。
2026/05/14
-
-
-
-








※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方