2017/12/11
安心、それが最大の敵だ
土木技術者・増田善之助の手書き地図
増田善之助(1928~2017)の名前は初耳だった。彼の作品に初めて接して激しく心を揺さぶられた。晩年の作家永井荷風が東京下町情緒を愛したように、東京都葛飾区(出身地)にお住まいだった善之助氏も東京下町をこよなく愛したようである。
善之助氏は、文京区役所土木部管理課に土木技術職として勤務し、定年後は手描き地図に没頭したという。そのきっかけは、20代後半の頃、当時生まれたばかりのお子さん(娘さんが2人いる)を乳母車に乗せて散歩をしている際に見かけた道標が気になり、史跡を調べるようになったことからだという。史実調査が興味対象で、その結果をまとめる手段として地図を描くようになったとのことだ。
本年春、善之助氏は他界された。享年88歳。善之助氏の詳しい経歴は今一つ不明だが、少年の頃から郷土史に興味をもった善之助氏は、江戸時代から明治時代の地図をもとに現在の河川・道路・鉄道など自分の表現したい内容を丁寧に調べ、美しい色彩で独自の作品を完成させた。善之助氏の手描き地図は、独創的で「みごと」の一言に尽きる。センスあふれる「芸術作品」と言ったら語弊があろうか。
善之助氏の地図に接した人なら、描かれた地域の魅力をただちに再発見できる。地図の魅力を紹介した楽しい図書『地図趣味』(著者:杉浦貴美子)の中で、杉浦さんは「手描き地図師に会いに行く」と題し手描き地図作製者増田善之助氏の作品を紹介し、高く評価している。杉浦さんが善之助氏の手描き地図を紹介した文を一部引用したい。
せん。増田さんの場合、そのエリアの調査をする段階でラフ地図が頭に描けて
いるからこそできる技なのです。また、持ち前の絵画センスと、長年にわたる修練で培った技術から生まれた、その緻密で精細な地図群はもはや工芸作品の域に達しています」。
(作製された地図は、葛飾区立図書館や板橋区公文書館にも所蔵されている)
参考文献:国土地理院プレスリリース、長久保赤水顕彰会文献、毎日新聞・建設通信新聞関連記事、筑波大学附属図書館・茨城県立図書館・高萩市教育委員会関連文献、「地図趣味」(杉浦貴美子)及び杉浦様の情報
(つづく)
- keyword
- 安全、それが最大の敵だ
- 国土地理院
- 西之島
- 東京
- 渋谷
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/15
-
-
-
-
防災は面白くないと広がらない
地震が起きたとき、スマートフォンに通知された情報を頼りに避難を判断することが多いだろう。緊急地震速報の情報から、いまどのように動くべきかを判断できる、そんな身近な危機管理を習慣づけた1 社が、アールシーソリューション(東京都新宿区)だ。2010 年に提供開始したスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」は、緊急地震速報を受信できるアプリとして多くのユーザーが利用している。代表取締役の栗山章さんは、数多くのユーザーに防災の重要性を広めてきた一方で、ビジネスとして成り立たせる難しさにも直面してきたという。これまでのサービス開発の経緯や、防災ビジネスへの価値観を聞いた。
2026/09/09
-
被災施設への再入場判断「戻ってはいけない」では解決しない避難後の問題
大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。 国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある
2026/09/09
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/09/07
-
-
-
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24





※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方