2018/01/17
阪神・淡路大震災から23年

阪神・淡路大震災から23年が経過し、神戸市では震災の経験を語り継ぐことが課題となっている。同市危機管理室では教育も含めた市民向けの発信のほか、市職員へは研修や近年の被災地への派遣を通じて経験を共有するようにしている。
同市危機管理室は市役所4号館に所在。2012年に竣工した同館1階には防災展示室が所在。小学生の社会科見学にも使われている。防災グッズの準備や家具固定など普段の備え、非常時のトイレの作り方などいざという時に役立つ手段などわかりやすく掲載。床には地震時の土砂崩れや津波時の浸水予測が表示された市内ハザードマップが広がっている。
教育では「幸せ 運ぼう」という副読本を小学生低学年・高学年、中学生向けに作成。市教育委員会を通じて配布し、授業に使用。夏休みには市役所で親子対象の防災教室も実施。2017年は1967年の水害から50年ということでペットボトルを使った雨量計づくりや気象の知識、土砂災害発生のメカニズムを学んだ。震災から時間がたち、現在の小・中・高校生は全員震災後の生まれ。「小さなころから同じことを繰り返し教え、子どもたちに徹底的に覚えさせることが経験の継承といざという時への役立ちにつながる」と市危機管理室 震災教訓・発信担当アドバイザーの石堂叶氏は語る。

NPO法人「神戸の絆2005」と協力し、同震災の語り部を市内に派遣する場合は市で費用を負担する。市外からの要請にも対応。今年度は市内で17件、市外は30件程度の派遣を行っている。市職員は自治会や婦人会、地域防災コミュニティといった地域の団体からの要請で出前トークを実施。市職員が防災について教訓を生かし、現在の取り組みや課題解決の話を行っている。
その市職員も震災以前から在籍しているのは約46%と、すでに半数を割っている。職員研修での経験継承のほか、震災時の恩返しの意味も込めて全国の被災地に職員を派遣。2011年の東日本大震災の際は延べ1900人、2016年の熊本地震では同じく約500人を派遣。さらに神戸に戻った後はほかの職員に経験を話すほか、レポートを書き市のイントラネットへの掲載を行う。
「とにかく震災の記憶が薄れることが恐い」と危惧する石堂氏。子どもや市民、そして市職員にも啓発活動を継続していく。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
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