特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)の概要【後編】
特定受託業務従事者の就業環境の整備

山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2024/11/07
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2023(令和5)年4月に成立した「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下「フリーランス新法」)が、いよいよ今月1日から施行されました。
フリーランス新法における主たる規制は、「特定受託事業者に係る取引の適正化」(第2章)と「特定受託業務従事者の就業環境の整備」(第3章)との2つに大別することができ、前者は、独占禁止法・下請法といった経済法のような性格をもち、後者は、労働基準法といった労働法のような性格をもっているということができます。
フリーランス新法のうち、「特定受託事業者に係る取引の適正化」(第2章)の概要については、前編で取り上げてご説明しましたので、後編の本稿では「特定受託業務従事者の就業環境の整備」(第3章)の主要なポイントをご説明したいと思います。
フリーランス新法における主な文言の定義については、下表のようになります(前編の表の再掲)。
前編では触れる必要がなかったため、上表には載せていないのですが、後編では重要となる文言があります。それは、「特定受託業務従事者」です。
「特定受託業務従事者」とは、「特定受託事業者である前項第1号に掲げる個人及び特定受託事業者である同項第2号に掲げる法人の代表者をいう」とされています(2条2項)。法技術上、「特定受託事業者」(2条1項。いわゆるフリーランスのこと)と分けられてはいますが、イメージを大掴みするという目的で(やや正確性を犠牲にして)いえば、「特定受託業務従事者」もフリーランスを指すといってよいといえます。
12条1項では、「特定業務委託事業者は、新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法(次項において「広告等」という。)により、その行う業務委託に係る特定受託事業者の募集に関する情報(略)を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない」とされ、同2項では、「特定業務委託事業者は、広告等により前項の情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない」とされています。
本条は、フリーランスに業務委託する企業等である特定業務委託事業者に対し、広告等により業務委託についてフリーランスの募集を行う際の的確表示義務を課すものです。
規制の対象となる広告等とは、次の方法です(12条1項、厚労省規則1条)。
規制の対象となる募集に関する事項とは、次の事項です(施行令2条)。
広告等で、実際の報酬額よりも高額な報酬額を表示したり、募集を終了したのにもかかわらず表示し続けたりすると、本条違反になると考えられています。ただし、当事者間での交渉を経て、双方の合意に基づいて、契約条件を募集時のものより変更した上で契約締結することは許されます(企業側としては、変更を強制されたといわれないよう、誠実かつ慎重に交渉・合意すべきであることはいうまでもありません)。
弁護士による法制度解説の他の記事
おすすめ記事
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方