特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)の概要【後編】
特定受託業務従事者の就業環境の整備
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2024/11/07
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2023(令和5)年4月に成立した「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下「フリーランス新法」)が、いよいよ今月1日から施行されました。
フリーランス新法における主たる規制は、「特定受託事業者に係る取引の適正化」(第2章)と「特定受託業務従事者の就業環境の整備」(第3章)との2つに大別することができ、前者は、独占禁止法・下請法といった経済法のような性格をもち、後者は、労働基準法といった労働法のような性格をもっているということができます。
フリーランス新法のうち、「特定受託事業者に係る取引の適正化」(第2章)の概要については、前編で取り上げてご説明しましたので、後編の本稿では「特定受託業務従事者の就業環境の整備」(第3章)の主要なポイントをご説明したいと思います。
フリーランス新法における主な文言の定義については、下表のようになります(前編の表の再掲)。
前編では触れる必要がなかったため、上表には載せていないのですが、後編では重要となる文言があります。それは、「特定受託業務従事者」です。
「特定受託業務従事者」とは、「特定受託事業者である前項第1号に掲げる個人及び特定受託事業者である同項第2号に掲げる法人の代表者をいう」とされています(2条2項)。法技術上、「特定受託事業者」(2条1項。いわゆるフリーランスのこと)と分けられてはいますが、イメージを大掴みするという目的で(やや正確性を犠牲にして)いえば、「特定受託業務従事者」もフリーランスを指すといってよいといえます。
12条1項では、「特定業務委託事業者は、新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法(次項において「広告等」という。)により、その行う業務委託に係る特定受託事業者の募集に関する情報(略)を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない」とされ、同2項では、「特定業務委託事業者は、広告等により前項の情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない」とされています。
本条は、フリーランスに業務委託する企業等である特定業務委託事業者に対し、広告等により業務委託についてフリーランスの募集を行う際の的確表示義務を課すものです。
規制の対象となる広告等とは、次の方法です(12条1項、厚労省規則1条)。
規制の対象となる募集に関する事項とは、次の事項です(施行令2条)。
広告等で、実際の報酬額よりも高額な報酬額を表示したり、募集を終了したのにもかかわらず表示し続けたりすると、本条違反になると考えられています。ただし、当事者間での交渉を経て、双方の合意に基づいて、契約条件を募集時のものより変更した上で契約締結することは許されます(企業側としては、変更を強制されたといわれないよう、誠実かつ慎重に交渉・合意すべきであることはいうまでもありません)。
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