2015/10/06
防災・危機管理ニュース
減災ソフトウェア開発に関わる一日会議2015
「減災ソフトウェア開発に関わる一日会議2015」が10月3日、東京都内で開催された。テーマは「ITに関する減災につながる行動、仕組みづくりの『パターン』を探る一日」。国立研究開発法人産業技術総合研究所主任研究員の江渡浩一郎氏ら同会議実行委員会の呼びかけによるもので、2013年から開始し、今年で3回目。

会議のテーマとなったパターン・ランゲージとは、ウィーン出身の都市計画家、建築家であるクリストファー・アレグザンダー氏が提唱する理論。何かを作り上げるときや実践する時の、状況に応じた判断の感覚(センス)を関係者が共有・活用するための手法で、同氏は人々が「心地よい」と感じる環境(都市、建築物)を分析して253のパターンを抽出し、都市計画の作成に生かした。パターン・ランゲージの手法はその後、ソフトウェア開発などさまざまな分野に活用されているという。
会議では、慶応義塾大学総合政策学部の井庭崇准教授からパターン・ランゲージの解説が行われた後、この手法を減災に役立てるために独自開発したサバイバル・ランゲージについて発表した。「海外で開催されたパターン・ランゲージの学会でサバイバル・ランゲージを発表したところ、次の年にはオレゴン州の津波対策についてのサバイバル・ランゲージを作ったチームも現れた」と、井庭氏は研究に自信をのぞかせる。


会議ではその後、一般社団法人情報支援レスキュー隊 IT DART 代表理事の及川卓也氏、村上明子氏から先月の関東・東北豪雨に対するIT DARTの活動内容報告や、南相馬市議会議員の但野けんすけ氏から東日本大震災時の同市の状況報告があったほか、日本総合研究所の東博暢氏からは災害時医療・救護のオペレーションについて現状と問題点が発表された。午後は参加者が3つのグループに分かれ、アンカンファレンス形式でワークショップを開催。それぞれの立場から減災のためのパターン・ランゲージの作成に取り組んだ。
この会議の成果は、文部科学省受託研究「都市災害における災害対応能力の向上方策に関する調査研究」において開発する「マイクロメディアサービスにおけるマッシュアップ・双方向インタラクション技術」のなかで、災害時におけるボランティアおよびプロボノによるマイクロメディア構築活動の支援・促進手法の調査報告として反映する予定だ。
□井庭研究室の「サバイバル・ランゲージ」ウェブサイト
http://ilab.sfc.keio.ac.jp/survival/index.html
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方