2019/09/12
昆正和のBCP研究室
■ハザードマップの活用
災害リスクを選定する際の判断材料の1つ目は、国土交通省や地方自治体がインターネット上で公表しているハザードマップである。地域ごとに検索してマップを探し出すこともできるし、「国土交通省ハザードマップポータルサイト( http://disapotal.gsi.go.jp/)」にアクセスすれば、トップ画面の検索機能を使って全国各地のさまざまな災害リスクを多層的に表示したり、各自治体のマップにジャンプしたりすることも可能である。
ハザードマップを入手したら、想定される被害の種類と程度を確認する。ハザードマップには「洪水」「内水」「高潮」「津波」「土砂災害」「液状化」「火山」など様々な種類がある。地震については「地震マップ」「震度マップ」その他の名称で出ている。使い方は以下のとおり。
(1) まず、自社の所在エリアを含むハザードマップを何種類か入手する。一例として沿岸部にある企業ならば「地震」と「津波」、埋立地にある工場ならば「地震」と「液状化」、また、起伏の多い地域にある会社は「地震」と「土砂災害」のハザードマップがあるとよい。また地域によっては火災による延焼や道路の寸断など広域的に予測したマップもあるので活用したい。
(2) 次にマップから危険性を読み取る作業である。マップには被災する可能性のあるエリアが色別に示されている。ここで自社の所在地と主要な社員の通勤圏および住所のそれぞれの観点から、どの程度被災する可能性があるのかを確認する。「会社のすぐ隣町は震度6強だが会社周辺は震度5弱で色分けされている」といった微妙なケースの地震想定は、大事をとって震度6強とするのが妥当だ。
■周辺環境や立地条件
災害を選ぶ際の判断材料の2つ目は、周辺の地理的環境や立地条件などを少し詳しくチェックすることである。先ほど述べたように、複数のハザードマップを参照することで、ある程度の潜在的な災害リスクを探り当てることができるが、ここではさまざまな災害リスクをリストにまとめてみよう。
□裏手に崖や高い急斜面がある会社:土砂崩れの可能性
□鉄道・道路の高架の下にある会社:車両や積載物が落下して社屋を破壊する可能性
□会社建物周辺の道路が狭い:緊急車両(消防車や救急車)の通行不能
□隣接する建物との間隔が狭くゆとりがない:火災・倒壊の巻き添えの危険性
□周囲に古い建物が多い:火災・倒壊の巻き添えの危険性
□会社建物が扇状地に立地:砂防ダムの決壊による土石流被害
□会社建物が中洲に立地:液状化・橋の崩落による孤立化
□工場が山の中腹に立地:沢の氾濫による冠水被害
なお、周辺環境や立地条件を災害の対象にするかどうかを検討する際は、社内だけでは即断できないことも多いので、必要に応じて市役所の土木課や地質調査会社などに相談するとよい。
昆正和のBCP研究室の他の記事
おすすめ記事
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
-
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
-
-
-
防災教育を劇的に変える5つのポイント教え方には法則がある!
緊急時に的確な判断と行動を可能にするため、不可欠なのが教育と研修だ。リスクマネジメントやBCMに関連する基本的な知識やスキル習得のために、一般的な授業形式からグループ討議、シミュレーション訓練など多種多様な方法が導入されている。しかし、本当に効果的な「学び」はどのように組み立てるべきなのか。教育工学を専門とする東北学院大学教授の稲垣忠氏に聞いた。
2025/04/10
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方