国政や日本全体に影響を与えた都の政策は多い

先進的な課題解決を

かつて、石原慎太郎知事は国の対策は不十分だとして、就任した1999年にディーゼル車規制を強く訴え、後に条例を制定。2003年に大幅な規制を実行し、日本全体の環境への取り組みを揺さぶった。防災についても2012年に「木密地域不燃化10年プロジェクト」を開始。2011年3月11日、東日本大震災発生直前の都議会で緊急輸送道路沿道建築物耐震化推進条例を成立させた。災害時に輸送上重要な道路が建物の倒壊などで閉塞するのを防止するため、沿道建築物の耐震診断を義務付けるなど画期的な条例だった。

猪瀬直樹知事は副知事時代から緊急輸送道路沿道など耐震化や不燃化といった、防災政策に注力。東日本大震災では宮城県気仙沼市の公民館に取り残された人がいることを、ツイッターを通じて知り、東京消防庁のヘリコプターによる救出につなげた。知事時代には被災地の復興の他、「心のデフレを取り除く」と語り、2020年オリンピック・パラリンピック招致に成功し日本を動かした。

舛添要一知事は2015年に「東京防災」をリリース。防災に役立つ内容に加え、都内全世帯に配布するという手法も話題を呼び、全国から注目され都外でも販売されるに至り、日本人の自助に対する意識を向上させた。

国に先んじて課題に挑み「東京が国を変える」という姿勢を都は長らく見せてきた。今回の長期ビジョンの他、同時に発表した2050年のCO2排出量の実質ゼロを目指す「ゼロエミッション東京戦略」でもDNAの一端は垣間見えている。

地元である兵庫県に大被害を与えた阪神・淡路大震災をきっかけに、国政時代から防災意識が高く無電柱化や乳児用液体ミルクの普及に注力してきた小池知事。液体ミルクについては今年から始まった国産品の製造・販売に大きく寄与し、無電柱化もその発信力で言葉は定着しつつある。今回の長期ビジョンでは出生率2.07という野心的なビジョンを出したが、防災においても帰宅困難者問題などの課題で国に先んじた対策を行っていけるか、今後も注目される。

■ニュースリリースはこちら
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/12/27/07.html(「未来の東京」戦略ビジョン)

http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/12/27/08.html(ゼロエミッション東京戦略)

http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/12/24/05.html(蓄電池等の設置に対する補助事業開始のお知らせ)

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(了)

※当連載を終了します。